3月26日にいよいよセ・リーグ公式戦が開幕する。
タイガースは転換期にきている。赤星の引退で外野手の定位置が一つ空いたことと、城島の加入で守備も打線も大きく変わった。
これは何を意味するか。5年間にわたった岡田監督の戦法をまったく別のものに変える時期がきたということである。赤星が出て足で撹乱し、金本が中心となる打線で返す。投手は矢野がリードし、先発を6回まで投げさせてリリーフが完璧に抑えて勝つ。このパターンをすっかり変えなけばならないということだ。
開幕前の各評論家は「赤星の代役はマートンでは無理」とシーズンに入ってもいないのにマートンに失格の烙印を押している。どの評論家もまだ岡田野球の呪縛から逃れられていないということだ。真弓監督は自分がトップバッターをつとめた1985年のタイガースのような、あるいは自分がコーチをしていたいてまえ打線爆発の2001年の大阪近鉄バファローズのようなチームづくりに方向転換をしたとみていいだろう。
赤星の代役が見つからないと嘆くファンも多いようだが、代役なんて見つかるわけがない。セ・パ12球団探しても赤星のような選手はいない。それだけの凄い選手だったのだ。だから、真弓監督はマートンに赤星の代役を求めたりはしないだろう。むしろ赤星とは違う魅力の一番打者、一発もあり左右にも打ち分けられる真弓明信のような打者を想定しているのではないか。
盗塁の数は減るだろう。しかし、常に次の塁を目指すという走塁意識があるならば、盗塁は少なくても足で点を稼ぐことはできる。ホームランと連打で打ち勝つ野球、それが今年のタイガースの形になる。鳥谷は昨年後半に打撃開眼し、今季は内角を見事にさばけるようになった。金本は故障もなく開幕を迎えられた。新井が不調ならばブラゼルか城島と打順を入れ替えればいい。代走要員として狩野、新人の藤川俊や田上もいる。代打には桧山、矢野、高橋光らベテランが控える。
桜井は固定して使うだろうが、林、浅井ら実力派とその定位置を争う位置にあることは間違いない。二塁も平野の固定ではなく関本や大和がその座を狙う。こうしてみると野手の層の厚さはジャイアンツにひけは取らない。
課題の先発投手陣だが、岩田が左ひじの手術で9月まで戦列を離れることになり、苦しい状況ではある。安藤、久保、下柳、能見、小嶋、上園というローテーションで当初はまわしていくことになるのだろう。しかし、これは若手にはチャンスである。石川、鶴、白仁田、ジェンら実績はまだこれからだが実力では小嶋、上園と競り合う若手が二軍で出番を待っている。シーズンは長い、開幕当初のローテーションで1年まわるチームはない。昨年のジャイアンツで、ゴンザレスやオビスポがあれほどの活躍をすると予想した評論家が誰かいただろうか。キャンプやオープン戦の結果だけで1シーズンすべてをはかることなど誰にもできはしないのだ。
リリーフは藤川球。アッチソンの退団を埋めるのはむろん久保田だ。先発が7回までもたせば、久保田と藤川球につなげば勝ちパターンに持ちこめる。早く崩れても西村、阿部、渡辺、江草、筒井でしのぐことができる。メッセンジャーとフォッサムには大きな期待をしないでよい。アッチソンやウィリアムスも来日当初は絶対的な信頼をもたれていなかったのだ。日本の野球に慣れてきた時が彼らの本領発揮の時。それまではワンポイントでの起用で十分だろう。
今年のタイガースは、岡田野球の呪縛に縛られている人たちにとっては頼りなく期待できないチームだろう。しかし、真弓監督も2年目で監督らしくなった。選手に任せるという自分のスタイルを貫けば、選手たちは監督のためでなく、自分たちのためにがんばり、意地を見せてくれることだろう。
優勝できればいいけれど、それよりも打って打って打ちまくるわくわくするような試合を見せてほしい。そうすれば結果はついてくる。
開幕前の予想ではたいていの評論家がジャイアンツ優勢と予想しているが、なにが起こるのかわからないのが長いシーズンの常。マジックまで出しながら13ゲームをひっくり返されたチームもある。岡田監督の率いる2008年のタイガースだ。ジャイアンツがそうならないと誰が言えるだろう。
どんなチームに変身したか。開幕から1ヶ月は、じっくりと見極めていきたい。
(2010年3月24日記)