北陸シリーズの遠征先で悲劇が襲った。チーフスコアラーの渡辺長助さんが心筋梗塞で突然死。チームを長年支えた裏方の死にタイガースナインは奮起。富山ではカープに圧勝。福井では苦手のバリントンに敗れ1勝1敗に終わったが、倉敷に移ってのベイスターズ戦では久々の二ケタ得点。甲子園に戻り、新井貴の連続試合ホームランや藤井彰の大活躍で連勝し、今季初めての同一カード3連勝を決めた。今節は4勝1敗。通算27勝30敗1分の勝率.474で、負け越しも3と減少。首位スワローズとと6.0ゲーム差の3位。勝率5割が間近に見えてきた。
◎カープ7回戦……7−4
試合開始前に渡辺チーフスコアラーが急死。「長さん」と選手たちに慕われた男に捧げる白星をと、選手たちが一丸となった。カープの先発は黄金ルーキー福井。2回表、新井貴が振り逃げで出塁すると、ブラゼルが久々の2ランホームランを富山の左中間スタンドに放りこむ。タイガースの先発スタンリッジはこの援護に応え3回まで一人のランナーも許さず。しかし、4回裏、梵を死球で出塁させると、2死から栗原の内野安打でランナーをため、岩本のレフト前ヒットで1点を返された。直後の6回表、先頭の藤井彰が四球で出ると、スタンリッジのバントはエラーでオールセーフ。マートンのセンター前ヒットで無死満塁とし、平野がライト前に弾き返して1点追加。さらに鳥谷が押し出し四球を選び、2点目。ここで福井は降板し、二番手上野からブラゼルのセンターへの犠牲フライで3点目。一気に4点差と突き放した。さらに7回表、藤井彰がフェンス直撃の二塁打を放つと、マートンの一塁ゴロで三塁に進み、平野の二塁ゴロの送球を一塁栗原が弾き、藤井彰が生還、5点差とした。スタンリッジは7回まで快調に飛ばしたが、8回裏、東出にセンター前ヒットを許し、丸のライト線への三塁打で1点を返される。さらに栗原の内野ゴロの間に丸も生還。3点差とされた。9回表、五番手永川勝からブラゼルがレフトスタンドへこの試合2本目のホームランで4点差としたが、9回裏、二番手榎田がつかまる。2死から石原に四球を与え、続く代打赤松には内野安打。ここで藤川球が登板、東出にレフト前に落ちるタイムリーを打たれたが梵を三振に打ち取り試合終了。弔い合戦を白星で飾った。当日に福井へ移動するためヒーローインタビューはなし。
◎カープ8回戦……1−2
苦手のバリントンに今回もやられた。今季初登板初先発の鶴が2回裏、ヒットの松山を塁に置き、天谷のタイムリーで1点を先制された。さらに3回裏、1死から梵と丸の連打でピンチとなり、栗原のレフト前タイムリーで2点目。しかし、以降は苦しみながらも無失点で切り抜け、5回裏は三者凡退と調子をあげたところで残念ながら交代。次回の投球に期待である。7回表、ライトオーバーの鳥谷の二塁打でチャンスを作る。バリントンの暴投で三塁に進み、新井貴の犠牲フライで1点を返したが、反撃もそこまで。9回表には切り札サファテに抑えられ、連勝はならず。
◎ベイスターズ6回戦……10−1
ベイスターズの先発はタイガースに2連勝の山本。しかし、苦手意識を吹き飛ばす猛打を浴びせる。初回、平野と鳥谷の連打でチャンスを作ると、ブラゼルは死球で2死満塁。続く関本も押し出しの死球でまず1点。3回裏には新井貴の久々のホームランがレフトスタンドに吸い込まれ、2点目。4回裏、1死からマートンが左中間に二塁打を放つと、続く平野の二塁打で3点目、そして鳥谷もライト前にタイムリーを放ち4点目。山本をノックアウトした。5回裏、二番手真田から関本がライト前にヒット、金本が長嶋茂雄の記録を抜く二塁打で無死二三塁とする。藤井彰と岩田の凡退のあと、マートンがライト前に2点タイムリーを放ち6点目。タイガースの先発岩田は5回まで1安打無失点に抑えていたが、6回表に石川に四球、下園にも四球を与え、暴投でランナーを三塁にやり、村田の内野ゴロの間にノーヒットで1点を奪われた。その後もヒットを打たれることなく8回まで抑えきると、8回裏、五番手大原慎から平野の四球と鳥谷のヒットでチャンスを作り、新井の併殺で2死三塁に。ここでブラゼルがレフト前にタイムリー。そして、代走から守備についていた上本がプロ入り初ホームランをレフトスタンドに叩きこんで10点目をあげた。9回表は二番手久保田がランナーを出しながらも無失点で逃げ切り、ベイスターズ戦の連敗をストップさせた。ヒーローインタビューは1安打1失点と好投の岩田。
◎ベイスターズ7回戦……6−4
初回、ベイスターズの先発須田から二塁打の平野を置いて新井貴が2試合連続となる2ランを左中間スタンドに運び先制。2回裏には藤井彰が移籍初ホームランをライナーでレフトポール際に叩きこむ。タイガースの先発メッセンジャーは好投を続けていたが、3回表、鳥谷が武山の平凡なゴロをトンネル。須田のバントで二塁に送られ、森本のタイムリーで1点を返された。さらに4回表にはスレッジのソロホームランで1点差に詰め寄られる。しかし、4回裏、ブラゼルと関本の連打でチャンスを作り、金本のショートゴロは併殺かと思われたが金本が必死で走って一塁はセーフ。三塁の鈍足ブラゼルに先ほどのホームランが鮮やかに記憶に残る藤井彰とあってベイスターズのバッテリーが完全に無警戒なのを狙い藤井彰がスクイズを敢行、みごとに決まり2点差と突き放す。5回表、代打下園、そして石川の連打と森本のバントで1死二三塁とされたメッセンジャーは金城に犠牲フライを打たれてふたたび1点差とされたが、その後はなんとかしのいでリリーフに託す。5回裏、二番手小杉からマートンがヒット。平野が送る。ここで三番手の左腕大原慎から鳥谷があわやホームランというライトオーバーの三塁打を放ち1点を加えると、ショート石川の三塁への悪送球で鳥谷は一気にホームインして点差を3とする。6回以降は福原、榎田、小林宏のリレーで8回まできっちり抑え、9回表には藤川球がマウンドに。内藤、石川の連打でピンチとなり、金城の二塁打で1点は許したものの因縁の村田を二塁フライに打ち取って試合終了。ヒーローインタビューは先制ホームランの新井貴とホームランにスクイズと大暴れした藤井彰。新井貴が「男前のホームラン」とほめると、藤井彰は「顔しか取り得がないもので」と返し場内爆笑のインタビューとなった。
◎ベイスターズ8回戦……10−0
初回、新外国人ゴンザレスからマートンが三振した時にはまた初物の外国人左腕にやられるのかと嫌な感じがしたが、この日は違う。平野がセンター前に弾き返すと、鳥谷の二塁への当たりはゴンザレスのベースカバーが遅れ内野安打に。新井貴のレフト前タイムリーで先制すると、ブラゼルもレフト前にタイムリー。関本もセンター前のタイムリー。浅井は左中間を破る二塁打でさらに1点。そして前進守備の二塁横を抜く藤井彰のタイムリーでこの回7連打6点の猛攻。そのあとは小杉、篠原のリレーの前に得点できずにいたが、四番手の真田から6回裏にまた猛攻。ブラゼルが四球で激高し、代走に新井良。浅井と藤井彰の連打で満塁とし、能見のレフト前ヒットで新井良が生還。浅井もホームに突っ込むが、これは暴走でアウト。しかし、マートンが左中間スタンドに3ランを放ち10点目を奪う。能見は7安打とヒットは打たれながらも要所を締めて8回まで無失点で投げ切り、体の張りを訴えて9回には渡辺が登板。覇気を失ったベイスターズ打線をかんたんに三者凡退に抑えて今季初の同一カード3タテ。ヒーローインタビューは猛打賞と好リードの藤井彰と今季初めての猛打賞の浅井。藤井彰は能見の分までコメントするサービスぶりでまたしても満員の観客を喜ばせた。
愛すれどTigers週間MVP
投手……能見篤史 前回はツキもなく敗れたが、今節では10点という大量得点にもかかわらず自分のペースで8回を無失点と投げ切り今季初の3タテをみごとになしとげた。この勝ち星を弾みに今後は連勝街道まっしぐらだ。
野手……藤井彰人 リードの巧みさやキャッチングのうまさはもちろん、今節は打撃でもホームランありスクイズあり猛打賞ありと大活躍。不振と故障の城島の代役を見事に果たしておつりがくる活躍だ。なによりも東大阪出身、生まれながらの大阪人らしい大ボケのヒーローインタビューがみごと!
木村拓コーチが亡くなった時のジャイアンツがチーム一丸となって優勝したように、選手たちを支えてきた裏方さんの死が選手に与える力は普通ではない。渡辺長助さんの死は悲しいが、その墓前に優勝のウィニングボールを捧げる日がくると私は確信している。次節はナゴヤドームで2位ドラゴンズと、秋田遠征で首位スワローズとの対戦。ドラゴンズとの差はわずかに2.5。少しでも勝率5割に近づき、ゲーム差を縮める遠征にしてもらいたい。
(2011年7月4日記)