愛すれどTigers


金本引退試合に甲子園超満員

 今節は、ナゴヤドームでのドラゴンズ戦、甲子園球場でのスワローズ戦とベイスターズ戦。いかにも消化試合というとびとびの日程だったが、金本の引退試合まであとわずかということでスタンドは連日超満員。ナゴヤドームでは新人の伊藤和が先発したが、力及ばず。スワローズ戦では若い岩本が自責点0で抑えたものの味方のエラーがからんで失点。そして今季最終戦となるベイスターズ戦ではメッセンジャーの好投で金本の引退試合を勝利で飾った、今節は1勝2敗。通算勝利は55勝75敗14分。勝率.423で、5位。ジャイアンツとの差は31.5ゲーム。なお、戦力外通告を小林宏投手、蕭一傑投手、松崎伸吾投手、野原祐也外野手、石川俊介投手、横山龍之介投手、甲斐雄平外野手、吉岡興志投手に行い、先に通告された鄭凱文投手、クレイグ・ブラゼル内野手とあわせ、10人もの選手が不本意ながらタイガースを去ることになった。

◎ドラゴンズ24回戦……1-4
 タイガース打線が初回に伊藤準を攻略。上本と大和が四球で出塁し、伊藤準の暴投で三塁まで走者が進むと、鳥谷がセンターに犠牲フライを打ち、1点を先取。しかし、後続を断たれて追加点はならず。タイガースの先発は伊藤和。ヒットの大島に盗塁を許し、荒木の右方向への二塁打で同点にされる。3回裏、先頭の森野のセンター前ヒット、ブランコへの四球で無死一二塁とされ、和田のショートゴロはベースカバーの上本が取れず、二塁走者の生還を許して負け越す。4回表には球界最年長の山本昌が登板。鳥谷がいきなりライトオーバーの三塁打を放ち、新井良、森田と四球で無死満塁に。ここで代打か金本が登場するが、速球を打ち損じてセカンドフライに倒れる。伊藤隼は三振、清水はライトフライで絶好のチャンスを逃した。その直後の4回裏、伊藤和は先頭の堂上直にセンター前ヒットを許し、1死後大島のヒットでピンチを広げ、荒木の二塁打と森野のライトへの犠牲フライで2点を失って、この回限りでマウンドを降りた。新人にとってはほろ苦いデビューとなった。5回裏、タイガースは奪三振王を狙う能見を中継ぎで投入し、6回まで投げて3三振を奪う快投。トップの杉内との差を4と縮めた。以降は、鶴、渡辺、加藤と小刻みな継投でドラゴンズ打線を封じたが、タイガース打線も7回から登板した大野を打てず、9回表には切り札岩瀬から新井良がこの試合チーム2本目となるヒットを放ったものの、期待の若手、森田、野原将、伊藤隼はベテランに手玉にとられて反撃できず、またもナゴヤドームで敗れてしまった。タイガースはこの敗戦で今季の5位が確定した。
◎スワローズ24回戦……0-2
 タイガースの先発は初登板からの3連勝を狙う岩本。3回表、先頭の森岡を歩かせ、石川のバントで二塁にやる。雄平のファーストゴロで森岡は三進。田中浩をサードゴロに打ち取りチェンジと思われたその直後、三塁新井良が一塁野原将の頭の上を大きく超す悪送球。先取点を許した。それでも岩本は切り替えて得点を許さない。対するスワローズは石川が先発。2回裏、新井良と金本の連打で無死一二塁とチャンスを作るが、ベテランの老獪な投球術の前に野原将、中谷、小宮山の若手たちが手玉にとられて得点できず。3回裏に大和がヒットを打ったあとはノーヒット。手も足も出ないというのはこのことか。6回表、先頭の武内に右中間に二塁打を打たれ、川端と福地に連続四球で1死満塁としたが、相川をショートゴロ併殺に打ち取り、ここでも岩本は勝負度胸の良さを見せた。それでも7回表、1死から石川にヒットを打たれ、2死後田中浩を歩かせたところで岩本は降板。二番手の加藤は武内をレフトフライに打ち取り、追加点は許さず。8回表、奪三振王を狙う能見が登板。1死から川端にライトオーバーの三塁打を打たれ、代打バレンティンにレフト前タイムリーを許す。それでも森岡を三振に打ち取り、続いて投げた9回表にも田中浩から三進をとり、トップの杉内に2差とつめた。9回裏、抑えのバーネットから一人でも走者を出したら金本にまわるという打順だったが、代打平野、鳥谷と凡退。期待は新井良に注がれたが、死球狙いに足を出してみたりと涙ぐましい努力をしたが三振で金本にまわすことはできなかった。
◎ベイスターズ……3-0
 タイガースの先発は能見。奪三振王のタイトルをかける。荒波と筒香から三振をとり、トップの杉内と並んだところで、2回からは10勝をねらうメッセンジャーにマウンドを譲る。メッセンジャーは気合の入ったピッチングで、ベイスターズ打線につけいるすきを与えない。3回表に三浦に打たれたセンター前ヒットと6回表の荒波の内野安打のみ。その荒波も盗塁を企図してきたが、藤井彰が絶妙のコントロールで刺した。ベイスターズはタイガースキラーで、金本と最も数多く対戦してきた三浦。2回裏、1死から伊藤隼太のセンター前に落ちるヒットと、藤井彰の一二塁間を破るヒットでチャンスを作ると、メッセンジャーがレフトフェンス直撃のタイムリー二塁打で走者を一掃し、2点先取。6回裏には金本が現役最後となるセンター前ヒットを放ち、即盗塁。新井貴のセンター前ヒットで一気にホームを狙うも、荒波の好返球に阻まれ、憤死。しかし、送球の間に二塁に進んだ新井貴を新井良がセンター前タイムリーで返して、決定的な3点目を入れた。9回表、最後の打者荒波はレフト金本への力のないフライ。ウィニングボールは主役の金本がつかんだ。金本は勝ち投手のメッセンジャーにボールを渡そうとしたが、メッセンジャーは笑って受け取らず、金本とハグ。試合終了後、金本の軌跡を編集したビデオが球場に流れ、そして「野球の神様、ありがとうございました」と締める金本のスピーチ。胴上げは背番号にちなんで6回。最後にファンにあいさつをするためフェンス沿いにグランドを一周した。途中で渡された小さな花束を左打席に置き、ナイン一人一人と握手(新井貴や平野にはビンタも)し、最後にファンに向けて大きく手を振って、金本は甲子園のグランドに別れを告げた。

愛すれどTigers週間MVP
投手……能見篤史 初めてのタイトルとなる最多奪三振を獲得した。今季のタイガースでは唯一のタイトルホルダーということになる。そのためにリリーフや先発しても1イニングだけという変則的な登板となったが、登板したからといって必ずしも三振を奪えるとは限らないだけに、力でタイトルをもぎ取った能見の実力に脱帽。
野手……金本知憲 引退試合でのヒット、盗塁。タイガースに来て以来最も楽しそうにプレーをしているように感じられた。タイガースファンの夢を現実に変えてくれた「鉄人」に感謝をこめて……。

 かくしてタイガースの2012年は終わった。有田コーチ、片岡コーチ、立石コーチ、田村コーチが去り、新たに黒田コーチ、水谷コーチ、河村コーチが就任。また、平田二軍監督が再びその任につくことになった。これからドラフト会議、そしてFA選手の獲得など、Aクラスのチームよりも早くオフシーズンに突入だ。タイガースは来季はどうなっていくのか。新しいコーチたちの手腕に期待したい。

(2012年10月12日記)


目次に戻る

ホームページに戻る