今節は甲子園開幕となったジャイアンツ3連戦。ここまで7勝1分と独走状態にあったジャイアンツに対し、能見、スタンリッジ、榎田の先発投手全員がみごとにジャイアンツを完封。2勝1分と独走に待ったをかけた。続く甲子園でのベイスターズ戦は、メッセンジャーと藤浪がまたも0封で2勝1敗。唯一6失点した岩田は二軍降格となった。今節はなんといっても藤浪のプロ入り初勝利。聖地甲子園では高校時代から負け知らずという相性の良さ。大投手への道の第一歩を記したのは、奇しくもあの村山実さんと同じ4月14日だった。今節は4勝1敗1分。通算で7勝6敗1分。勝率.538。首位ジャイアンツとのゲーム差は3.5の2位と一気に浮上した。
◎ジャイアンツ1回戦……2-0
タイガースの先発は能見。初回から速球でぐいぐい押して、三振を取りまくる。3回表、先頭の矢野にレフト線に二塁打を打たれたものの、宮國はスリーバント失敗、長野は空振り三振、脇谷はサードゴロと後続を断つ。ジャイアンツの先発は若手の成長株宮國。3回裏まではパーフェクトに抑えられたが、4回裏に突如制球を乱し、2死から鳥谷が四球、マートンが゛ヒットでチャンスを作るも福留はセカンドゴロ。5回裏、新井貴と藤井彰のヒットで1死一二塁としたが、能見がバントを空振りしてしまったため、飛び出していた二塁走者新井貴は帰塁できず阿部の牽制に刺される。それでもタイガース打線はしぶとい。6回裏、先頭の西岡がライトとセカンドの間に落ちるテキサスヒットを俊足で二塁打にし、大和がバント。一塁のロペスが判断よく三塁に送球し、西岡は二三塁間で狭殺されたが、その間に大和は二塁へ。鳥谷の三振で2死とされたが、マートンのセンター前ヒットで大和が一気にホームを突き、相手の送球の乱れで先制の1点目を入れる。さらに福留がライト前にタイムリー。マートンも全力疾走でホームインし、しっかりと得点を追加できた。これは昨年なら1点どまりのケース。福留の勝負強さが光る。8回表、1死からボウカーがショートへの内野安打、矢野がヒットで続き能見はピンチを迎えたが、代打大田をライトフライ、長野をファーストフライに打ち取り、ここでも速球で押しまくってピンチを脱した。9回表、1死から坂本にセンター前ヒットを打たれたが、阿部をセカンドゴロ併殺に打ち取ってみごとな完封勝利。10奪三振と好調ジャイアンツ打線を封じた。ヒーローインタビューは完封の能見と先制タイムリーのマートン。昨年の「能見さん嫌い」発言を意識してか、マートンは日本語で「能見さん愛してる!」とお立ち台でハグしてみせた。
◎ジャイアンツ2回戦……0-0
タイガースはスタンリッジが先発。初回、いきなり先頭の長野のヒットと坂本のライト線への二塁打で1死二三塁のピンチを招いたが、阿部を三振、村田をライトフライに打ち取って切り抜けた。ジャイアンツは杉内が先発。やはり初回、今度は西岡のヒットと鳥谷の二塁打で1死二三塁と攻め立てるが、マートンはサード正面へのライナー、福留は三振でこちらも得点できず。スタンリッジは完全に立ち直り、6回までピンチらしいピンチなし。しかし7回表、1死からボウカーにライト線へヒットを打たれてしまうが、二塁を狙ったボウカーを福留の好返球で刺し、続くロペスにもヒットを打たれたものの矢野をサードゴロに打ち取ってこの回限りでお役御免。7回裏、2死からコンラッドが四球、藤井彰のヒットで杉内を攻め立てるも代打関本はライトフライ。杉内もこの回限りで降板した。8回表、二番手の福原が2死から脇谷の二塁への間一髪の内野安打と坂本のライト前ヒット、そして盗塁、阿部への敬遠で満塁にされたが村田を高めの速球でセンターフライに打ち取り、ピンチを脱した。タイガースは久保、安藤、加藤とつないでジャイアンツ打線を完封。ジャイアンツも山口、西村とつぎこんでくる。延長11回裏、先頭の鳥谷のライト前ヒットで期待が膨らんだが、マートンは投手西村へのピッチャー返しも実らずショートゴロ併殺。福留が四球で出塁したが新井貴は三振。最後はマシスンに締められてこちらも完封され、12回両チームゼロ行進で引き分けた。
◎ジャイアンツ3回戦……3-0
タイガースの先発は榎田。初回、先頭の長野にレフト前ヒットを許し、脇谷のバントで二塁に。しかし、坂本をセンターフライ、村田をピッチャーライナーに打ち取り、ピンチを脱した。タイガース打線もジャイアンツの先発澤村の立ち上がりを攻める。ライト前ヒットの西岡を大和が送り、鳥谷のレフト前タイムリーで先制。さらに3回裏、1死から大和がレフト線に二塁打を放つと、鳥谷は凡フライに倒れたもののマートンのライト前タイムリーで追加点を奪った。5回表には先頭のロペスに右中間を破られるかという当たりをとばされたが、福留が飛びこんでダイレクトキャッチ。味方のファインプレーで榎田は勢いづき、ジャイアンツ打線に自分のスイングをさせない。8回表、先頭の實松に二塁打を打たれ、代打の阿部を歩かせたところで福原に交代。福原は長野を変化球攻めにしてセンターフライに打ち取った。8回裏、二番手笠原から西岡が四球を選び、大和が送る。鳥谷も四球でチャンス拡大。マートンは空振り三振に倒れたが、福留のライト前タイムリーで西岡が生還して決定的な3点目を奪う。二塁ランナーの鳥谷もホームに突っ込んだが、カットプレーに阻まれ4点目はならず。9回表、久保はストライク先行の攻めの投球で脇谷を空振り三振、坂本をセカンドゴロ、そして村田も空振り三振に打ち取り、抑えに転向して初めてのセーブを記録した。ジャイアンツ3連戦で3試合とも完封したのは長い歴史でも初めて。ヒーローインタビューは先発転向初勝利の榎田と、ファインプレーとダメ押しタイムリーの福留。
◎ベイスターズ1回戦……2-0
タイガースの先発はメッセンジャー。2回表、2死から金城に強いピッチャー返しのセンター前ヒットを打たれた。よけるような形になってしまっていた。だからか、続く荒波のピッチャーライナーは強烈な当たりだったががっちり捕球して難を逃れた。直後の2回裏、ベイスターズの先発高崎に対し、先頭の福留が四球を選び新井貴の二塁の頭を越すライト前ヒットで三塁まで到達。コンラッドは三振に倒れたが、藤井彰との間にランエンドヒットを敢行、鈍い当たりのサードゴロが内野安打になり、福留が生還して先制する。メッセンジャーがバントを決め、2死二三塁とすると、西岡は一二塁間を破るライト前タイムリーで新井貴を返し、2点差とした。メッセンジャーは3回以降、変化球を巧みに織り交ぜ早打ちのベイスターズ打線にも助けられて快調に飛ばす。3回裏、鳥谷とマートンの連打でチャンスを作るが、福留、新井貴が連続三振。コンラッドも凡フライでチャンスをつぶし、以降は高崎を立ち直らせ投手戦となる。8回裏、二番手吉川から福留とコンラッドのヒットで2死一二塁としたが、藤井彰はショートゴロに倒れ、2点差のまま9回に。それでもメッセンジャーは最終回も三者凡退に抑え、今季初完封。ジャイアンツ戦から数えて4試合連続の完封となった。ヒーローインタビューは完封で2勝目をあげたメッセンジャー。
◎ベイスターズ2回戦……1-6
タイガースの先発は岩田。初回、先頭の石川にセンター前に打ち返されると、内村のバントで二進を許し、多村のピッチャー返しの打球を取れず、センター前タイムリーに。さらにブランコ、ラミレスを歩かせて1死満塁に。中村紀の鈍い当たりのセカンドゴロで多村が生還。荒波のライト前ヒットでブランコが生還。鶴岡の右中間への二塁打でラミレスが生還。藤井のセカンドゴロを西岡がトンネルしてしまい荒波と鶴岡が生還して一挙6点を失った。連続無失点記録はおろか、連勝で勢いに乗ってきたチームに水を差す四球やエラーであった。2回以降は岩田も立ち直り、本来の切れのある変化球でベイスターズ打線にまともな当たりをさせなかったが、時すでに遅し。ベイスターズの先発藤井秀は狙い球を絞らせない老獪な投球でタイガース打線を抑える。3回裏、左中間を破る三塁打で大和が出塁。鳥谷が歩き、マートンの犠牲フライで1点を返すが、反撃もそこまで。タイガースは6回から若手の歳内、藤原がランナーを背負いながらもなんとかベイスターズ打線を封じるが、ベイスターズも6回以降は加賀、大原、ソーサ、三嶋と小刻みな投手リレーでタイガース打線をかわし、逃げ切った。とにかく初回の6点、それがすべてを決めてしまった。この試合はMBSが試合前のセレモニーを仕切り、観客に放送局のシンボルカラーである緑の風船を配るなどして盛り上げようとしていたが、そういう企画のある試合は逆に負けてしまうことが多いような気がする。
◎ベイスターズ3回戦……4-0
タイガースの先発は藤浪。初回から快調に飛ばし、ランナーを背負っても落ち着いたプレートさばきでピンチを広げない。ベイスターズはタイガースキラーの三浦。3回までパーフェクトピッチングで、相変わらずのキラーぶりを見せつける。試合が動いたのは4回裏。先頭の西岡がショートへの内野安打で出塁すると、大和が初球でバントを決める。鳥谷の一塁ゴロはブランコが雑なミットさばきで後ろにそらし、西岡は一気にホームインして先制。5回裏には先頭の新井貴がヒットで出塁すると、1死から藤井彰のショートへの深いゴロを石川が二塁に悪送球し、1死一三塁とする。ここで藤浪が投手右にセフティースクイズをみごとに決めて新井貴を迎え入れ、自らの手で追加点を奪う。さらに西岡がせん田へ前に弾き返すタイムリーヒット。移籍初盗塁を西岡が決めると、大和がレフト前に連続タイムリー。4点差をつけた。藤浪は6回まで投げて無失点。7回からは安藤、福原、久保のリレーで逃げ切った。藤浪は甲子園の申し子らしく、本拠地でプロ入り初勝利を飾った。ヒーローインタビューは藤浪と西岡。西岡は途中で藤浪一人にお立ち台を譲る粋な演出を見せた。
愛すれどTigers週間MVP
投手……能見篤史 岩田以外のすべての投手にMVPをあげたい気分。特にプロ入り初勝利の藤浪に、とも思ったが、両リーグ完封一番乗りで、ジャイアンツ打線の調子を完全に狂わせ、快進撃のきっかけを作ったエースの能見が今節一番の功労者だろう。この調子で東京ドームでもジャイアンツ打線を封じてほしいものだ。
野手……西岡剛 ムードメーカーとして完全に定着した。西岡が出塁すれば、何かが起こるという気にさせてくれる。打率も,373でリーグ4位につけている。今節は待望の移籍初盗塁も決めた。ホームランの出やすい東京ドームでは先頭打者アーチも期待したいくらいだが、とにかく出塁してかき回してもらいたい。
次節は東京ドームでジャイアンツ戦。甲子園で完封した勢いをホームランの出やすい東京ドームでも続けていってほしい。ジャイアンツは東京ドームではいまだ無敗。ここでも初黒星をつけるのはタイガースだと断言しておこう。続いては甲子園に戻りスワローズ戦。神宮での連敗のお返しをするのは甲子園をおいてほかにない。藤浪がまたも聖地で躍動する姿をぜひ見たいものである。
(2013年4月15日記)