愛すれどTigers


2013年度を振り返って

 和田監督2年目は、米メジャーリーグ帰りの西岡、福留を獲得し、新外国人のコンラッドと合わせて強力打線を組めるはずだった。しかし、コンラッドは当て外れ。1打点も稼げずに戦力外となった。西岡は積極的なバッティングで打線を引っ張り、”グラティ”ポーズを生み出してベンチのムードを変えた。しかし、アメリカで故障した箇所は完治しておらず、欠場や二軍での調整もよくあり、年間通じて引っ張り続けることはできなかった。福留は打率こそ上がらなかったが、シーズン当初たびたびチャンスで長打を放ち守備でもいいところを見せてさすがと思わせたが、すぐに故障で離脱し、秋口に復帰するまで長期の欠場を余儀なくされた。
 しかし、既存の戦力が力を発揮し、前半戦を引っ張った。開幕四番の新井良は故障で離脱したがそのあとに四番に座ったマートンが来日初年度を思わせる活躍を見せ、打線に芯ができた。三番には鳥谷が定着し、五番の新井貴は肩の故障を治して柔軟な打撃が戻ってきた。二番にはついに大和が固定され、西岡とともにチームを引っ張った。福留の穴は今成が、新井良の穴は坂がみごとに埋めた。
 先発投手陣は開幕投手をつとめたメッセンジャーとWBCで調整をはやめた能見、ジャイアンツ戦に強かったスタンリッジ、新人の藤浪がローテーションを固めた。誤算は岩田で、チャンスを何度も与えられながら、期待を裏切り続けて二軍落ち。先発に転向した榎田はローテーションの一角を守るかに思われたが、まだ肘が万全ではなく、何度か二軍で調整することになった。ほかに、鶴、白仁田らが先発として起用され、それぞれ一度は好投して期待を持たせたが、残念ながら後が続かなかった。
 リリーフエースと期待された久保が、たびたび逆転を許すと、シーズン途中で二軍落ち。抑えは固定されないまま、ベテラン中継ぎ陣、安藤、加藤、福原のトリオが調子の良い順に任され、最後は福原で落ち着いたが、クローザーの固定ができなかったのは優勝を逃した一因だっただろう。しかし、ベテラン勢の踏ん張りは素晴らしかった。後半戦になると、新外国人のボイヤー、そして復調の気配を見せる久保田、2年目の若手松田が加わり、リリーフに関しては終盤中継ぎで加わった久保も含めてまずまずの働きを見せた。
 開幕から少しずつ勝ち星をのばし、交流戦も勝ち越し、夏の長期ロードも乗り切って、8月末、0.5ゲーム差に迫った首位ジャイアンツと東京ドームで対戦。直前には鬼門のナゴヤドームで3連勝して勢いに乗っていただけに、ここで1つでも勝っていれば9月の戦い方も変わったはずだ。しかし、ここで3連敗をくらい、甲子園に戻ってからはショックが尾を引いて各カードで負け越しを続け、3位に転落する可能性まで出てきた。結局追い上げてきたカープを最後に突き放し、2位でシーズンを終了した。和田監督は鳥谷を四番に据えるなど、なんとか風向きを変えようとしたが、東京ドーム3連敗でつかみそこねた流れを引き戻すことはできなかった。終盤は打線が機能せず、好投を続けて先発ローテーションに加えた秋山も貧打に泣いて勝ち星なし。”失速”という言葉がまさにふさわしいシーズンとなった。
 クライマックス・シリーズは藤浪を初戦の先発で起用するなど奇策を用いたが、カープに2連敗して日本シリーズ進出も果たせなかった。
 今季の収穫はなんといっても新人の藤浪、そして2年目の松田の登場だろう。藤浪は自主トレから育成計画を立て、中西コーチが最新の起用法を続けて10勝を記録し、ローテーションの一角にみごとに入った。松田は夏場に昇格し、中継ぎで好投、プロ入り初勝利も手にし、将来はクローザーという期待もかかる活躍を見せた。野手では大和が途中でバントの際に骨折して戦列離脱したが、二番センターのポジションをものにした。もっとも、欠場中は俊介が活躍して来季はこの2人のポジション争いになるだろう。
 今季の成績は73勝67敗4分。勝率.521。優勝したジャイアンツとのゲーム差は12.5で2位。3位カープとの差は4.5ゲーム。タイトルホルダーはマートンが最多安打、メッセンジャーが最多奪三振に輝いた。ベストナインはショートの鳥谷とセカンドの西岡、外野のマートン。ゴールデングラブにはショートの鳥谷が選ばれた。藤浪は新人王をスワローズの小川に譲ったが、連盟から特別賞を受けた。

愛すれどTigers年間MVP
投手……安藤優也、加藤康介、福原忍 この3人のリリーフでの活躍で藤川の穴を埋めた。来季はここまでの活躍はできないかもしれないが、新守護神と期待される呉昇桓につなぐ役割が来季も期待される。ベテランの味を十二分に見せてくれた。こういうサブ触れイヤーがいるチームが強いのだ。
野手……西岡剛 移籍1年目で、なくてはならない選手になった。まさにチームのムードを変えた男だ。本当なら全試合出場してもらいたかったし、シーズン終盤は息切れをした感があるのだが、まずこのチームに漂っていた思いムードを一掃してくれた点を評価したい。

 スタンリッジをあえて切り、クローザーとして韓国を代表するリリーフ投手の呉昇桓を獲得。さらに新井貴とポジションのかぶるマウロ・ゴメス内野手を獲得し、抑えと長打力という弱点は補強できた。しかし、スタンリッジに加えて久保のFA流出で先発投手陣が一気に弱まった。榎田、岩田、筒井ら実績のある左腕、鶴、白仁田、秋山ら実力を出し切れていない右腕が候補としてあがる。ドラフト一位の岩貞も好捕に加わるのか。若手野手では伊藤隼、森田、一二三、西田、北條、中谷といった掛布塾の期待株がどれだけ一軍に定着できるのか。来季は今季以上に若手に頼る場面が出てくるはず。チャンスをものにできる逸材の登場を楽しみにしたい。

(2013年12月21日記)


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