愛すれどTigers


2014年度を振り返って

 開幕カードのジャイアンツ戦でアクシデントは起きた。二塁手の西岡と右翼手の福留がフライを追って激突し、西岡は脳震盪で起きてこられずにそのまま救急車で運びだされ、シーズンのほとんどを怪我との戦いで費やした。福留も前半戦は骨折の影響でバッティングの調子が上がらなかったが、守備の堅実さで和田監督は起用を続けた。
 こういう時こそ代役の出番である。本来なら二塁の定位置をつかんでいたはずの上本が、バットを短く持って刻む打法に変えて一番打者に定着し、二番の大和とともに打線を引っ張った。クリーンアップトリオの活躍は特筆に値した。三番の鳥谷はその選球眼と確実性で四番のゴメスにつなぐ。ゴメスは勝負強さと日本野球への順応性の高さを示して1年目で打点王というタイトルを獲得した。五番のマートンはゴメスが逃したチャンスを救うようにヒットを量産し、来日初の首位打者に輝いた。
 しかし、ウィークポイントである先発の頭数が最後まで揃い切らなかったのが優勝を逃した大きな要因だろう。メッセンジャー、能見、藤浪に加え、復調なった岩田の5人でローテーションがまわったが、もうひと枠は最後まで固定されなかった。新人の岩崎が予想を上回る活躍で一時ローテーションを守ったが、夏場に降格。中継ぎで頭角を現した金田が先発で起用されて勝利をあげ、新人の岩貞もプロ入り初勝利は飾ったが、ローテーション確保にまでは至らなかった。当初はロー手入りしていた榎田は中継ぎにまわったが、不安定なまま終わる。前年活躍していた加藤も夏場以降は二軍に。若手の藤原も一軍定着はならなかった。左のリリーフは移籍2年目の高宮だけが最後に残ったが、あとは筒井、小嶋ら実績のある選手も今期は不調に終わった。右のリリーフはベテランの安藤、福原に頼らざるを得なかった。期待された松田はキャンプで肩を故障し、終盤戦でやっと一軍に復帰。歳内と競うように活躍を見せたのは来季への光明か。
 抑えは呉昇桓が期待通りの活躍を見せ、セーブ王のタイトルを獲得した。2位をなんとか確保できたのには呉昇桓の存在が大きい。
 シーズンを通してみれば、首位ジャイアンツに肉薄し、ひっくり返すチャンスは何度かあった。しかしここ一番というところで勝ち切れず、監督自ら「$勝負の月」とした9月にまたも失速した。最終戦の段階ではカープの勝敗で2位になるか3位になるか決まるという際どいところにあり、カープの自滅でなんとか2位に踏みとどまった。そのためクライマックス・シリーズのファーストステージは甲子園で行うことができ、投手陣の踏ん張りで1勝1分でファイナルステージに進出でき、東京ドームでは打線が爆発してジャイアンツに4連勝。日本シリーズ進出が決定した。
 日本シリーズでは接戦が続いたが、ここというところで決定打が出ずに敗北。しかし、藤浪はじめ若手選手にはまたとない経験になったはずで、たとえ日本一を逃したとしても、シーズン2位での進出ということも合わせ、優勝への渇望は大きくなったことだろう。
 個人ではマートンが首位打者、ゴメスが打点王、メッセンジャーが最多勝と最多奪三振、呉昇桓が最多セーブ、福原が最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。ベストナインには鳥谷、ゴメス、マートンが選ばれた。ゴールデングラブ賞は鳥谷と大和が獲得。ゴメスと呉昇桓の補強が大成功だったことを示している。
 オフの補強では元アスレチックスの中島を獲得にいったがバファローズにさらわれるなど、FAでの大型補強はならなかったが、そこは若手の底上げのチャンスというように見たい。
 決して満足できるシーズンだったわけではないが、日本シリーズに進出するなど、最後まで楽しませてくれたシーズンだった。
 今季通算75勝68敗1分で勝率.521。優勝したジャイアンツとのゲーム差は7.0。3位カープとは0.5ゲーム差。

愛すれどTigers年間MVP
投手……岩田稔 今季ダメなら引退も覚悟していたという左腕がよみがえった。勝利数は9勝にとどまったが、防御率はセ・リーグ2位。突如崩れる悪癖も影を潜め、打たせて取るクレバーな投球でチームの危機を幾度となく救った。来季は防御率1位を狙うと宣言。来季への期待も込めてMVPとしたい。
野手……上本博紀 西岡の長期離脱というチャンスをみごとにものにした。エラーは多いが、守備範囲の広さは天下一品。骨折で戦列を離れた時期に、一番打者に苦しむなどその存在感を一気に増した。成績以上に必要不可欠な選手になったということで今季のMVPとしたい。

 来季は球団創立80年の年。過去、記念の年では50周年の1985年に日本一、70周年の2005年にはリーグ優勝を飾っている。縁起をかつぐわけではないが、今シーズンを踏まえてみれば、優勝できなかった悔しさとクライマックス・シリーズを勝ち抜いた自信とで選手たちも気持ちの上では来季こそという気持ちが高まっているのではないか。オフの補強を失敗という向きもあるが、平田二軍監督のヘッド昇格など、首脳陣の補強が大きな力になるのではないかと感じている。

(2014年12月29日記)


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