愛すれどTigers


2015年度を振り返って

 開幕カードのドラゴンズ戦、2試合のサヨナラ勝利を含む3連勝と上々のスタートを切ったタイガースだったが、ベイスターズに苦戦するなど、出だしから波に乗り切れなかった。原因は、両外国人打者の不調。マートンは歴代外国人最速の日本通算1000本安打は記録したものの、前半は1割台から2割台と打率が低迷。走塁にも迷いが見られ、守備は返球が緩慢で、レフト前ヒットを打たれると相手の走者は躊躇なく先の塁を狙いにいった。これで重ねた失点と、中盤から調子をあげてきた打撃と、天秤にかけてもマイナス面が目立った。1年目は打点王に輝いたゴメスも執拗な内外角攻めに幻惑され、ここというところでの三振が目立った。ホームランの数も伸びず、20本に届かなかったのは誤算だった。
 当初は西岡が三番打者に名を連ねたが、ひじの故障で手術をするなど、途中で戦列を離脱した。二番を打った大和も打撃不振でセンターの定位置を守ることができなかった。鳥谷も怪我の影響で、打撃成績は決して満足できるものではなかった。
 打線の低調さを救ったのは福留で、昨シーズの終盤からあげてきた調子を維持し、ここぞというところでのホームラン、タイムリーで接戦をものにした。開幕当初の六番打者から、最後は三番に落ち着き、一時は四番も打った。卓越した守備力でピンチを何度も救った。頭を越す打球をわざと凡フライに見せかけるトリックプレーを披露したあたり、ベテランらしさも随所に見せた。
 若手の台頭を期待されたが、目立ったのは新人の江越で5本塁打とフルスイングは来季以降の成長を期待させたが、大振りも目立ち、打率は低調だった。それでも守備、走塁でも随所に光るものを見せ、期待は高まる。正捕手候補の梅野は開幕からマスクをかむり続けたが、リード面で大量失点が続き、二軍落ちも経験した。投手によってベテランの藤井や鶴岡の併用が増え、正捕手を決めることができなかった。伊藤隼は打撃開眼かと思われたが、守備の不安定さと怪我で一軍定着はならず。
 三塁も西岡の故障のあとは今成と新井良の併用が続き、最終的には今成が定着したが、完全にポジションを固めるところまでいかなかった。二塁の上本が骨折で登録を外れた時に、大和を起用したように、失敗に目をつむって若手に賭けることができなかった。
 先発投手陣は安定していた。チーム最多勝は14勝の藤浪。199イニングを投げ、リーグ最多勝まであと1勝と迫る活躍。特に苦手の左打者に対して思い切った投球ができるようになった。メッセンジャーは9勝にとどまったが、打線との兼ね合いで好投しながらも勝てない試合が続いたのは気の毒だった。能見と岩田は試合ごとに好不調の差が激しく、負け越した。それでも、ローテーション投手4人を年間通じて固定できたのはタイガースだけだった。5番手投手として、岩崎、岩本、秋山、岩貞、新人の横山が争ったが、岩崎が3勝にとどまったものの安定した投球でシーズン終盤には完全にローテーションに加わった。ただ、リリーフが左腕は高宮、右腕は安藤と福原に頼らなければならない状況は変わらず、育成から這い上がった島本、リリーフに転向した歳内、背水の陣の二神がそれなりに好投するようになったが、勝ちパターンではなかなか起用しにくかった。抑えの呉昇桓も最多セーブのタイトルは取ったものの、リリーフ失敗も昨シーズンよりも目立った。
 打率は最下位、防御率も最下位ながらAクラスにとどまったのは、接戦をものにしたからだ。
 交流戦ではセ・リーグで唯一勝ち越して、離されかけたベイスターズやジャイアンツを追い越し、8月は首位の座を守り続けた。しかし今シーズンも9月に失速。精神的なスタミナにも問題があったか。優勝まで一番近いと言われながら、結局スワローズの後塵を拝することになった。3位とはいえ、勝率は5割を切り、カープの負け頼みで辛うじてAクラスにとどまった。
 CSではジャイアンツ戦で苦手のポレダとマイコラスを攻略し切れず、ファーストステージで消えた。
 和田監督は退任を表明し、球団創設80周年を優勝で飾ることはできなかった。
 今季通算では70勝71敗2分。勝率.496で3位。優勝したスワローズとは6.0ゲーム差、2位ジャイアンツとは4.5ゲーム差。
 タイトルは藤浪の最多奪三振。福原の最優秀中継ぎ。呉昇桓は最多セーブをスワローズのバーネットと分け合った。ベストナインにはショートの鳥谷、外野の福留が選ばれ、ゴールデングラブ賞も鳥谷と福留が選出された。

愛すれどTigers年間MVP
投手……藤浪晋太郎 ついにエースへの道をしっかりと歩み始めた。初タイトルと、チーム最多勝。目標の200イニング登板には1イニング足りなかったが、リーグでは一番の投球回を記録。完投勝利数もリーグトップ。なにより、荒れ球でピンチを作っても、最後は三振で切り抜けるという、はらはらさせつつも爽快な投球が魅力だった。来季はリーグを代表するエースに育ってもらいたい。
野手……福留孝介 過去2年の不振を一気に晴らすような活躍を見せた。三番打者に固定されると、一番の鳥谷を確実に返してくれた。20本塁打はチーム最多。いずれもここぞという場面で出た価値のあるホームランだった。安定した守備で投手を助け、怪我をしても荒木のバットを借りるなど工夫をして活躍を続けた。文句なしにMVP。

 和田監督の退任で、金本知憲新監督が誕生した。「超変革」をスローガンに、若手を競わせてチームを活性化させようとしている。コーチも一気に若返った。ドラフトでは抽選で勝って明治大の高山外野手を一位指名。藤川球児投手の復帰、FAのドラゴンズ高橋聡投手の獲得で投手陣を整備し、マートンにかわる新外国人もハグ(ヘイグ)が内定した模様。補強はそこまでにとどめ、後は横田、北條らを二軍監督に就任した掛布雅之さんが鍛え上げる。チームが大きく変わろうとしている。「厳しく、明るく」をモットーにした新生タイガースに期待したい。

(2015年11月30日記)


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