3月25日、昨年と同じドラゴンズと、場所も同じ京セラドーム大阪で今シーズンの開幕戦が行われる。
われらがタイガースを率いる新監督は金本知憲。コーチ経験のないままの監督就任をいちばん不安に感じていたのは本人だったかもしれない。しかし、「超変革」をスローガンに「明るく、厳しく」をモットーに取り組んだ秋季キャンプで、われわれファンはその不安を吹き飛ばした。バッティングコーチさながらに江越、陽川らを指導。また、バッティングが小さくなっていた大和や上本らには「強く振る」ということを強調して打撃練習に取り組ませた。ベースランニングもリレー競技にして自らわざわざトップを走る選手を妨害してみたりするなど、「明るく、厳しく」を実践してみせた。
春季キャンプには横田、北條、緒方など期待の若手を抜擢し、オープン戦でも積極的に起用し、結果が出れば起用を続けた。
二軍監督に就任した掛布雅之とは連絡を密にし、ドラフト1位の高山は大学4年の秋のリーグで骨折したこともあって、リハビリメニューからじっくりと取り組ませた。そして掛布二軍監督のお墨付きをもらうと宜野座キャンプに呼び寄せ、オープン戦では実戦経験を積ませた。一軍と二軍の風通しがよくなり、宜野座から安芸に一軍が戻ってからは頻繁に一二軍での選手の入れ替えを行い、多くの選手にチャンスを与えた。
コーチ陣には、和田前監督を支えた高代、平田両ベテランコーチがヘッドとチーフにつき、片岡、久慈コーチら復帰組、香田、濱中、中村豊コーチら二軍からのスライド組、矢野、金村暁コーチら新任組がうまく組み合わさって、監督に進言しながらメニューを組んだ。
戦力はマートン、呉すんふぁんの両外国人が退団した。その穴を埋めるべく、野手ではヘイグ、投手ではマテオ、ドリスを獲得した。独立リーグで復帰に備えていた藤川球児の獲得は大きな戦力となったが、トレードはFAで中継ぎ左腕の高橋聡文をドラゴンズから獲得したくらいで、それ以外は新人の補強だけにとどまった。
その点だけを指摘してタイガースの戦力低下、Bクラスを予想する解説者もいるが、キャンプを視察した解説者たちは誰もがタイガースを上位に置いている。
横田はオープン戦で首位打者を争う活躍を見せ、高山も出場した試合のほとんどでヒットを放った。北條は勝負強いバッティングで「ポスト鳥谷」の一番手に名乗りを上げた。若手に刺激され、西岡らベテランも最後まで上本、大和とポジションを争った。
なんと新井良や安藤が開幕二軍落ちとなった。昨年までなら考えられないことである。
先発投手は開幕投手をつとめるメッセンジャー、藤浪、能見、岩田、藤川と5人がそろい、六番手を岩貞、秋山、岩崎らが争う。中継ぎは左腕では高宮、高橋聡、榎田、右腕では歳内、二神、金田、福原とコマがそろい、抑えにはマテオが戦力になりそうである。もしマテオが不調なら、ドリスもその座をねらう。
打線は高山、横田がオープン戦の勢いそのままに開幕に突入。西岡、鳥谷、福留、ゴメスら実績のあるメンバーが名を連ねる。不安はヘイグだが、何試合か様子を見て今成との併用も考えられるし、北條の抜擢もありうる。正捕手は固定できるところまでいっていないが、二軍で長年こつこつと積み重ねていた岡崎が第一捕手に抜擢される。当面は梅野との2人体制で行くようだが、ベテランの鶴岡やオープン戦では岡崎と正捕手を争った小宮山、新人の坂本らも戦力として計算できる。内野の控えには大和、上本といった他チームならばレギュラー確定といえる実力者が虎視眈々とチャンスをねらっている。外野も緒方、江越などここ一二年でホープとして期待を集めるメンバーがシーズンに入っても競争に加わるだろう。代打の切り札にはチャンスに強い狩野がいる。こと外野守備に関しては、マートンそのものが穴だったのが解消されただけでも大きい。
最大の戦力補強は「金本監督」の存在だったのではないか。支配下だけでなく、原口や田面ら育成枠の選手も競争に加わっている。この競争意識による戦力のかさ上げは、ドラゴンズの監督に落合監督が就任したときに似ている。
ただ残念なのは「声出し」にからむ金銭授受や、高校野球くじ、ドーピング検査慰労などの問題が発覚したことで、大きなスキャンダルにならないように四藤新球団社長がいち早く発表したりしているけれど、ファンからのヤジは厳しくなることだろう。
そのようなヤジがかき消されるような熱戦を期待している。
あえて「優勝」は望まない。しかし、他球団と比べると、特に先発投手陣の安定ぶりでかなりいいところまでいくのではないか。
金本監督の「超変革」はこれから始まるのだ。
(2016年3月23日記)