愛すれどTigers


2017年を振り返って

 金本新監督のもと、「超変革」をスローガンに春季キャンプから若手を鍛え上げた。ドラフト1位の高山は骨折のあとのリハビリも兼ねて安芸キャンプからのスタート。これが結果的によかったのではないか。
 オープン戦から若手をとっかえひっかえ起用し、それでも力を見定められなかった。長いシーズンは、オープン戦の延長だったように思われた。2試合と同じオーダーが続かない。調子のよい選手を優先的に使う。ヒットが続いたら先発出場も続くが、ヒットが出ない翌日の試合はベンチスタートという日々が続いた。
 1年間かけて篩い分けはほぼ終わった。
 若手でレギュラー候補として残ったのは、野手では原口、北條、高山の3名。投手では岩貞、岩崎の両左腕。それ以外の選手は来季の一軍が保証されたわけではない。
 ただ、こんな若手育成のシーズンになったのには理由がある。計算できるはずのベテランと中堅の不振が目についたからだ。特に鳥谷はこれまでならば考えられないようなミスを守備でも打撃でも連発した。フライを見失いお見合いになったことが再三あり、打撃は金本監督の方針通り強く振って引っ張る。これで本来の流し打ちのうまさがすっかり見られなくなった。そして、連続試合フルイニング出場の記録は途切れ、ショートの定位置は北條に譲ってサードや代打での起用が多くなった。新井良、今成、大和、俊介、上本ら中堅は低打率にあえいだ。西岡は調子があがってきたところでアキレス腱を断裂。最ベテランの福留だけが元気で、日米通算2000本安打を記録し、史上最年長で2度目のサイクルヒットも達成した。
 抑え投手を固定できなかったのも痛かった。マテオはシーズン当初は快調にセーブを稼いでいたが、故障で一時戦列を離れた。頼みのセットアッパー福原は球威が落ちて痛打されることが多く、二軍落ちする。最後は引退を決めた。一時ドリスが抑えをつとめたが、故障離脱。
 チームを救ったのは原口である。4月末に育成から支配下登録にすると一気に一軍の「顔」になった。5月の月間MVPを受賞した。出場試合数が少ない中でチーム2位の10本塁打は立派。4番打者としても打席に立った。原口のこの活躍をシーズン前に予想できた人はほとんどいなかったのではないか。
 高山も規定打席に達したセ・リーグの打者の中では、得点圏打率第2位という勝負強さを見せた。新人のシーズン安打数で坪井を超えるなど、新人王選出は文句なし。さすが東京六大学の通算安打数記録を塗り替えただけのことはある。
 プロ入り初安打が代打ホームランという印象的な場面でスタートした北條は、その素質をついに開花させた。打撃センスは高校時代から定評があった。一軍で経験を積むことで1試合ごとに成長を見せた。同い年の鈴木(C)、田村(M)そして藤浪に負けない活躍を期待できる。
 打者では板山、中谷、陽川、江越、横田、荒木たち若手がそれぞれに見せ場を作ったもののシーズンを通しての好不調の波が大きかった。
 先発投手陣では今年初めてローテーションに入った岩貞が10勝。オールスターにも初出場し、9月の月間MVPに輝いた。メッセンジャー、能見がローテーションを守った。誤算は藤浪と岩田。藤浪はついに壁にぶち当たったか。岩田が1勝もできず期待を大きく裏切ってしまった。中継ぎでは島本が成長し、松田もシーズン終盤では安定した内容の投球を見せた。
 抑えはマテオ、ドリスの両外国人が主にになった。藤川は先発から中継ぎに回って、抑え役も果たすというフル回転。結果は全盛時のようにはいかなかったが、復活の兆しを見せた。
 外国人選手はメッセンジャーとマテオ、ドリスが活躍。途中入団のサターホワイトはこれという決め手がなく、退団となった。実績のあるゴメスは内外角を攻められて空振り三振が多く、今季限りで退団となった。ヘイグは開幕当初こそ期待通りの活躍を見せたが、故障離脱して以降は力を発揮できず、1年で退団となった。
 タイトルホルダーなし、ベストナイン、ゴールデングラブもなし。表彰されたのは新人王の高山のみと寂しい結果に終わったが、今年は育成の年、みのるのは来季以降だ。
 2016年のタイガースは、64勝76敗3分の勝率.457で4位。優勝したカープとは24.5差と離されたが、2位のジャイアンツとは7差。3位ベイスターズとは5差。

愛すれどTigers年間MVP
投手……岩貞祐太 未完の大器が開花した。開幕からローテーションに入り、シーズン当初は奪三振、防御率ともトップを争う活躍。東京ドームのジャイアンツ戦で1-0のプロ入り初完封を成し遂げたのは圧巻であった。オールスターにも監督推薦で出場し、タイガースの看板選手の一人として認められた。夏場に調子を落としたが、秋には復調し、10勝目を記録した。新たなジャイアンツキラーとして、来シーズに真価が問われることになるだろう。
野手……福留孝介 昨シーズンに続き、今季も打線の軸としてぶれることなく働いた。日米通算2000本安打と2度目のサイクルヒットを記録し、来シーズンは鳥谷にかわってキャプテンの任に就く。若手が入れ替わり立ち替わり起用される中、最年長の福留の存在感は増すばかりだった。

 FAでバファローズから糸井嘉男外野手が加入。人的補償で金田和之投手が移籍することになったのは痛いが、ドラフト指名された小野泰己、福永春吾、藤谷洸介の3投手がそのかわり以上のものを果たしてくれることと期待したい。ドラフト1位で大山悠輔内野手が加入し、若手の競争はますます激しくなる。今シーズンに経験を積んだ選手たちが、強烈に鍛えられている。来シーズンへの種まきは終わった。指揮官として初めてのシーズンを終え、金本監督の采配も成長を見せてくくれることだろう。来季以降への期待を持たせてくれる1年だった。

(2016年12月20日記)


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