金本監督２年目は、「挑む」をスローガンに昨季に続いて春季キャンプから若手を鍛え上げた。北條をショートの定位置につけ、鳥谷と競わせた。原口も捕手として練習させた。
誤算は新外国人のキャンベルが体調不良や故障で開幕戦に間に合わなかったこと。そこで急遽鳥谷をサードにコンバートした。鳥谷はキャンプではサードの練習はほとんどしていなかったため、開幕当初は守備面でのミスが目立った。ＦＡ移籍の糸井は開幕に間に合わせたため大きな影響はなかったが、誤算はこれだけに終わらなかった。
期待された北條は極度の打撃不振で新人の糸原に先発の座を譲り、その糸原もショートに定着したから思われたが、試合中に怪我をしてシーズン途中でリタイア。二遊間はオープン戦で打ちまくった上本と両打ちが形になり打率をあげた大和が先発として固定された。その上本も守備面の不安から試合終盤では荒木や森越に交代することが多かった。
原口は結局一塁で起用されたが、キャンプでもほとんど守ってなかったため守備でのミスがたびたび出て、それが打撃に影響したか、代打要員となることが多かった。その一塁には緊急補強のロジャースがついたが、期待されたほどの一発はなく、糸井が故障で二軍落ちした時に活躍したが、終盤はベンチスタートが多くなった。
高山は自分のバッティングを見失い、守備でもたびたび失策をして二軍落ち。２年目のジンクスをもろに体現してしまった。
そのかわりに台頭したのが中谷と新人の大山で、中谷は濱中以来のシーズン２０ホームランを記録してクリーンアップを任された。大山は開幕当初は二軍で体力作りに専念。６月から一軍に上がり、ここというところでの長打で終盤は４番に座ることが多かった。
課題だった捕手はね坂本の怪我もあって梅野が主戦捕手として固定され、強肩とバントの確実性でアピールした。ベテランの岡崎も交流戦ではプロ入り初ホームラン、初サヨナラ打を放ち、二番手捕手としての地位を手に入れたかと思われたが、坂本の復帰で二軍落ち。坂本が終盤は先発出場を増やし、梅野の先発出場はメッセンジャーの登板時に限られるようになった。
若手が伸び悩んだ分だけ、ベテランと中堅が踏ん張った。鳥谷は２０００本安打を記録し、怪我での欠場が目立った糸井もシーズン当初と終盤では勝負強さを発揮した。上本、大和だけでなく、俊介はシーズン当初のバント失敗で二軍落ちしたものの交流戦で一軍に復帰し、１番打者として安定した成績を残した。伊藤隼は主に代打を任され、ここぞというところで結果を残した。福留と糸井はシーズン途中からレフト、ライトにコンバートされるなどしたが、勝負強さを見せて打線の核として目立った働きを見せた。三塁の守備に慣れた鳥谷は、顔面に死球を食らいながらもフェイスガードをつけて試合出場を続け、主に６番打者として全試合出場を果たした。
こと野手陣に関しては、今年も競争の年となった。ただ、キャンプやオープン戦で経験していないポジションにシーズン途中でコンバートするなど、長期的な展望があまり見られなかったといえるだろう。
先発投手は最多勝ペースのメッセンジャーがジャイアンツ阿部の打球を受けて足を骨折し、エース不在という事態を招いた。年間通してローテーションを守ったのはベテラン能見と秋山の２人のみ。新人の小野はローテーションに入ったものの初勝利までが遠く、結局２勝に終わった。オープン戦で好投しながら二軍スタートとなった岩田がメッセンジャー欠場を受けて終盤にローテーション入りをしてチームを助けた。岩貞は昨年の大胆な攻めが見られなくなり、青柳は荒れ球を指摘されたかその持ち味である思い切った攻めができなくなった。藤浪はスワローズ戦で乱闘騒ぎのもととなる死球を与えてから自分の投球を見失い、ともに二軍で一からフォーム固めをする始末。ファイターズから緊急でメンドーサを補強したものの、１勝もできずに退団。先発投手の層の薄さが露呈した。
それでも途中まで優勝争いに残れたのはリリーフ陣の充実。クローザーのドリス、セットアッパーのマテオ、中継ぎの桑原のトリオは往年のＪＦＫに比肩する働きを見せ、岩崎、高橋聡をいれて５投手が６０試合登板を記録。藤川も本来の球威を取り戻しつつあり、５０試合を超える当番数。後半戦では石崎がここに加わり、１点でもリードしたら勝ちと思わせる継投ができるようになった。
首位のカープには食らいついていき、９点差をひっくり返すなどして苦手意識を払拭したかと思われたが、ここで３連勝すればカープに肉薄できるとされたマツダスタジアムで連日の逆転負けをくらい、優勝の望みを断たれた。しかし、ことカープ戦について言えば紙一重の勝利が多く、力量はかなり接近しつつあることを示した。
クライマックスシリーズの第一ステージで泥まみれになりながら敗れ、ベイスターズにファイナルステージに進まれてしまった。投打のかみ合った時のベイスターズの筒筒よさを思い知らされた。
タイトルホルダーは、最多セーブにドリス、最優秀中継ぎを桑原とマテオが分け合うという今季の勝ちパターンを反映した結果になった。ベストナインはなし。ゴールデングラブ賞に三塁では初受賞となる鳥谷と、野手については寂しい結果になった。
２０１７年のタイガースは、７８勝６１敗４分、勝率は．５６１でシーズン２位。首位カープとは１０．０差。３位ベイスターズとは４．５差。
愛すれどTigers年間ＭＶＰ
投手……桑原謙太朗 誰がこの活躍を予想しただろう。昨シーズン一軍登板のなかった崖っぷちの男が、ナチュラルに曲がる「まっスラ」と度胸満点で投げ込む速球でキャリアハイとなる数字を残した。抜擢した金本監督の炯眼もすごいが、それにこたえきった桑原もみごと。
野手……鳥谷敬 ２０００本安打を達成しただけではなく、急造三塁手としてスタートしたにもかかわらずゴールデングラブ賞を獲得するなど本来の鳥谷らしさを十分に発揮した。特に顔面死球以降はそれ以前よりも調子をあげていったように思われる。フェイスガードをしながら打席に立つ姿に、若手たちも感じるところはあったのではないか。。
ＦＡで大和がベイスターズに移り、人的補償で尾仲祐哉投手が移籍してきた。韓国野球で結果を残したロサリオを獲得し、ドラフトでは大学や社会人の選手を中心に指名した。いよいよ結果の求められる３年目を迎える。そろそろ選手を固定して臨みたいところだ。そうすれば優勝も狙えるチームになれる。
（２０１７年１２月１８日記）
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