金本監督は3年目にして「これまでで最高のチーム」と開幕時に言い放った。スローガンは「執念」。鳥谷を二塁にまわし、大山を三塁に、糸原をショートに固定。二塁はオープン戦から絶好調の上本をスタメンに置いた。四番一塁に新外国人のロサリオを固定した。ロサリオは韓国野球で実績を残し、キャンプでも素晴らしい当たりを飛ばして期待を持たせた。どの解説者も口をそろえて「ロサリオは本物」とほめたたえた。
しかし、そのロサリオはオープン戦後半から内角攻めにあい自分のバッティングを見失った。性格のよさが裏目に出た。内角を意識し過ぎるあまり、外角に逃げる球をとらえられず、期待したような大砲ぶりは発揮できなかった。甲子園でのホームランは1本もなし。2度の二軍落ち、そして退団という結果に終わった。シーズン途中に獲得したのは左打ちのアベレージヒッター、ナバーロ。チャンスに強い面を見せたが、一発の怖さはなく、ロサリオの代役たりえなかった。
大山も開幕戦でのホームランで期待を持たせたが、その後は右打ちを意識し過ぎて不調に陥り、二軍での再調整を余儀なくされた。期待通りの活躍を見せたのは9月。ホームランもふたケタ台に乗せたが、シーズンを通して活躍できなかった。センターで開幕スタメンを勝ち取った高山は持ち前のバッティングセンスを生かすことができず一二軍を行ったり来たり。それでも序盤は上本が大活躍してチームを引っ張ったが、走塁中に怪我をして中盤以降は戦力にならず。
二塁にまわった糸原がシーズンを通して安定した成績を残し、チームで唯一の全試合出場を果たした。また、シーズン当初は二軍スタートとなった北條が夏場からしぶとい打撃で頭角を現した。しかし、ダイビングキャッチを試みた時に肩を痛めて9月以降のショートは森越、植田に頼らざるを得なかった。鳥谷は先発から外れることが増え、慣れない二塁守備に気を取られたか打撃不振に陥り、連続試合出場の記録が途切れたあとはほとんど代打要員となってしまった。
糸井も四球で足を骨折。無理をして出続けたが終盤はやはり登録抹消。福留はコンスタントに結果を残したが、疲れをとるために先発を外れることも多かった。外野の穴は俊介、伊藤隼らでしのいだが、代打では結果を残していても先発出場すると精彩を欠いた。中谷は開幕二軍。年間を通じて安定した力を発揮することはできなかった。
結局固定できたポジションは二塁の糸原と捕手の梅野だけ。こうなると、金本監督はその時調子のよい選手をとっかえひっかえしてオーダーは毎日変動した。
先発投手陣は、前半は快調に飛ばしたメッセンジャー頼り。しかし年齢からくるものか、日米通算100勝を目前にした後はひとつも勝てなくなった。年間通じてローテーションに残ったのは岩貞と小野だけ。どちらも10勝に達することはできなかった。序盤に光るものを見せた高橋遥も中盤からは肩の痛みを訴えて二軍落ち。終盤にやっと青柳と岩田がローテーションに入ることができた。秋山は昨年度のような安定したコントロールを保てず、故障で終盤は出番なし。藤浪も四球を出すと自滅してしまうことが多く、やっと終盤に少しずつ自分の持ち味を発揮し始めた。投手で台頭してきたのは先発では才木、リリーフでは望月。しかし経験不足は否めず、ここぞというところで打たれてしまうことが多かった。榎田との交換で移籍してきた岡本がリリーフとして安定した力を見せた。リリーフも昨年ほどの強力さはなかった。桑原はスライダーが決まらない時によく打たれた。故障で高橋聡が離脱し、マテオは速球の切れがなく、代役のモレノも力不足。リリーフに転向した能見と藤川に頼らなければならない状態に陥った。クローザーのドリスもセーブこそあげたが、リリーフ失敗も目立った。
それでも9月の初めまではAクラス圏内にいたが、最後は大失速。結局最下位に沈んでしまった。その結果を受け、金本監督は解任に近い辞任。志半ばでユニホームを脱ぐことになった。
タイトルホルダー、ベストナインともになし。辛うじて梅野がゴールデングラブ賞を受賞しただけという寂しい結果に終わった。
2017年のタイガースは、62勝79敗2分で勝率は.440の6位。
愛すれどTigers年間MVP
投手……能見篤史 リリーフにまわってからの能見の安定感はおよそ打たれる気がしないくらいだった。福原、安藤に続き、ベテランをリリーフ投手として再生させるという形ができたか。来季は福原と同様中継ぎのタイトルも狙えると見た。
野手……糸原健斗 唯一の全試合出場。オールスターにも選ばれ、来季はキャプテンの大任を任されるところまできた。練習熱心でしぶとく勝負強い。金本監督は糸原のような選手を並べたかったのかもしれない。
辞任した金本監督にかわり、ファーム日本一に輝いた矢野二軍監督が一軍監督に昇格。「必死のパッチ」をスローガンに、ではなく「ぶち破れ」をスローガンにして最下位から一気に優勝を目指す。FAでバファローズから西が入団。リリーフに新外国人投手のジョンソンを獲得したが、補強はドラフトのみ。外国人選手はナバーロ、ドリス、呂彦青が残留。メッセンジャーはFA権を手にして、来季からは外国人枠から外れるので、ロサリオにかわる大砲を狙っているという。それよりも、大山、高山、中谷らの成長を期待しているということだろう。とにかく足を使った超積極野球を一軍でも見せてくれるのか。矢野監督の手腕に期待したい。
(2018年12月12日記)