愛すれどTigers


球児、笑顔の別れ、そしてバトンは藤浪に

 今節は甲子園球場でジャイアンツ戦。あわやノーヒット負けというところを中谷の一打で救われたが、初回に青柳が乱調で完敗。それでも青柳は規定投球回に2年連続で到達した。試合終了後、藤川の引退セレモニーが行われ、笑顔で現役に別れを告げた。続いて甲子園球場でベイスターズ戦。藤浪がが好投して、リリーフ陣もベイスターズ打線を抑え、近本の三塁打で決勝点をあげ、最終戦を勝利で飾った。試合終了後、矢野監督が来季への意気込みをファンに伝え、今季限りで退団が決まった能見が球場を一周してファンに別れを告げた。今節は1勝1敗。今季通算60勝53敗7分で勝率.531で2位。優勝したジャイアンツとは7.5ゲーム差。3位ドラゴンズとの差は1.0ゲーム。

◎ジャイアンツ24回戦……0-4
 タイガースの先発は青柳。1回表、1死から松原に粘られて歩かせると、重信のライト前ヒットで一二塁とされ、岡本の二塁ゴロは小幡がトンネル、松原が生還して先制される。丸のレフト線のタイムリー二塁打で2点目を失うと、田中俊は投手ゴロで岡本を三本間で狭殺。2死一三塁から若林の打席で重盗を試みられるが、捕手坂本誠は三塁へ送球。丸を三本間にはさむが、坂本誠の三塁への送球がそれて丸はセーフで二三塁に。若林のレフト前タイムリーヒットで3点差とされる。ジャイアンツの先発は畠。2回裏、マルテと坂本誠の四球で2死一二塁とするも小幡は三塁へのフライに倒れる。畠は3回無安打無失点で交代。4回からは戸郷が登板。新人王に向けて勝ち星をつけてやろうという原監督による交代だろう。その戸郷の前に6回まで無安打無得点。青柳は2回以降立ち直り、5回を投げ切って規定投球回数に到達した。6回表は二番手馬場が抑える。7回表、三番手は久々の登板となる守屋。岸田のヒット、松原、重信への四球で2死満塁とされ、岡本に押し出し四球で4点目を献上する。7回裏は三番手桜井の前に三者凡退。8回表は四番手小川が登板し、無失点。8回裏、四番手高橋優から中谷がこの試合タイガース唯一のヒットとなるセンター前ヒットを放ち、暴投と捕逸で三塁まで進み、木浪の四球で一二塁とするが、近本は二塁ゴロで得点できず。9回表、引退試合の主役、藤川が登板。代打坂本勇、中島はいずれもフルスイングで藤川の速球勝負にこたえ、連続三振。重信を二塁フライに打ち取り、藤川の現役最後の試合は終わった。9回裏は五番手高梨の前に三者凡退で1安打完封負け。しかし、勝敗よりも、試合後の藤川球児引退セレモニーがこの日のハイライト。ウィリアムス、久保田から始まるビデオメッセージには城島、ダルビッシュ、和田毅、清原、岩瀬、上原、斎藤雅といったそうそうたるメンバーがそろい、花束贈呈はジャイアンツ坂本勇、リンドバーグの渡瀬マキと岡田彰布元監督。そして矢野監督を捕手にラストピッチ。感謝の言葉で埋め尽くされたスピーチのあと、記念写真をとり、甲子園を場内一周して、藤川はグラウンドから去っていった。
◎ベイスターズ24回戦……1-0
 タイガースの先発は藤浪。1回表、宮本を空振り三振に取ったあと、大和のヒットと神里への四球で一二塁とするも、細川を見逃し三振、ソトを空振り三振に取って無失点の立ち上がり。ベイスターズの先発は大貫。1回裏、大山三振のあと、木浪の投手前の内野安打と近本の四球でこちらも一二塁とするが、サンズと陽川が連続空振り三振に倒れる。4回表、神里にレフト線に二塁打を打たれるも、細川の打席で神里を二塁牽制球で刺し、細川を空振り三振、ソトを三塁ゴロに打ち取り、ここも切り抜ける。5回表、柴田の二塁打と中井の投手強襲ヒットで無死一三塁とされるが、大貫はスリーバント失敗、戸柱は空振り三振、宮本は見逃し三振と力強い投球を見せ、無失点でこの回限りで交代。5回裏、1死から植田がレフト前ヒットを俊足で二塁打とするも、代打島田の二塁ゴロで植田は三進。大山は申告敬遠で、木浪は二塁ゴロとここも攻略できず。6回表は二番手馬場が登板。大和のショートへの当たりは木浪が好捕して一塁へ好送球しアウトに。神里と細川を三振にとり、三者凡退に抑える。7回表は三番手伊藤和がソトを歩かせたが後続を断つ。7回裏、ヒットの梅野を植田がバスターエンドランのショートゴロで二進させ、代打原口は死球。しかし大山は三塁ゴロ併殺で大貫を攻略できず。大貫は7回無失点で交代。8回表は岩貞が2死から大和を歩かせるも神里を二塁ゴロに打ち取る。8回裏、二番手石田に対し、木浪のセンターフライを神里が落球して木浪は二塁へ。近本がライト線へ先生のタイムリー三塁打を放つ。江越三振のあと、陽川の二塁ゴロで近本が本塁をつくも憤死。ここで三番手ピープルズがマウンドへ。中谷は三振に倒れる。9回表、五番手は今季限りでタイガースを退団する能見が登板。細川にセンター前に弾き返されるが、ソトをショートゴロ併殺にとり、柴田を空振り三振に取って最終戦を締めくくった。能見には坂本から赤薔薇の花束が手渡され、やはり今季限りで退団するベイスターズのラミレス監督には矢野監督が花束を渡した。ダイヤモンドに選手と監督コーチが並び、湯の監督の来季に向けた力強いあいさつでシーズンは終わった。勝利投手は岩貞。そして能見は最後にグラウンドを一周してタイガースファンに別れを告げた。

愛すれどTigers週間MVP
投手……藤川球児、藤浪晋太郎
 最後の1イニング、坂本勇、中島らに全球「火の玉ストレート」で勝負。無失点で有終の美を飾った。藤川ほどの存在感のある投手はなかなか出てこないだろうが、翌日先発の藤浪は精神的にも落ち着いた投球で無失点。その存在感を示した。
野手……近本光司
 大山のホームラン王と近本の三割到達が期待された今節だったが、残念ながらどちらも達成できずに終わった。それでも最終戦に力強いタイムリー三塁打で今季を締めくくった。新人から2年連続盗塁王はタイガースでは赤星以来。来季こそは3割50盗塁でホークスの周東より上であるところを見せてもらいたいし、それができた時にはタイガースの優勝もまた達成できていることだろう。

 2020年の公式戦は全日程が終了。今季のセ・リーグは「クライマックス・シリーズ」が実施されないので、公式戦優勝のジャイアンツがそのまま日本シリーズにコマを進める。それでいいのです。公式戦最終盤の調子では、タイガースの方がジャイアンツを上回っているので、もしかしたら「下克上」が見られるかもしれないけれど、7.5ゲーム差をつけられた2位のチームがリーグを代表してはいけません。
 個人タイトルも確定。近本が最多盗塁、スアレスが最多セーブに輝いた。大山は残念ながらノンタイトル。しかし、タイトルが取れなかったからこそ来季への意欲が増すということもある。来季はベテランが次々と退団していったことにより、20代後半で脂の乗ってきたメンバーが中心選手としてチームを引っ張ることになる。糸井の処遇が微妙だが、大幅減俸をのみ、来季は大山の前後を固める役割を果たしてもらおう。
 優勝こそ逃したけれど、来季に向けていろいろと光明の見えたシーズンでもあった。
 ガルシア、ボーアの両外国人選手が退団の方向。しかし能見が退団して手薄になった左腕リリーフの候補としてムードメイカーであるガルシアを置いておく手はないのかな。ボーアも期待したほどの結果は出なかったけれど、一塁守備はさすが現役大リーガーといえるものだったし、打球の強さは本物。もう1年様子を見ることはできないものか。特にマルテは怪我が多い選手なので、ボーアの力を必要とする時がくると思うのだ。もっとも佐藤輝を一塁に固定して起用するというなら、話は別なのだが。

(2020年11月9日記)


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