愛すれどTigers


2020年を振り返って

  矢野監督は事あるごとに「今年は日本一になります」と宣言していた。「予祝」というのだそうだ。つまり、今年は勝てると自らに暗示をかけるようなものだろうか。おりしも球団創設85年。節目の年はタイガースは強い。
 外国人選手8名をそろえた。残留のマルテ、ガルシア、呂に加え、現役メジャーリーガーのボーア、韓国野球の打点王サンズ、中継ぎで実績のあるエドワーズ、メジャー経験はないが伸びしろのあるガンケル、ホークスを自由契約になったスアレス。高校生がほとんどを占め、即戦力の少ない新人選手のかわりに、外国人選手で補強した。春季キャンプは順調に行っていた。ところが、新型コロナウィルス感染症の流行を受け、政府が緊急事態宣言を出し、3月の開幕が見送りになった。藤浪、伊藤隼、長坂が感染し、他の選手たちも自宅での調整となった。カープは感染者の少ない広島でトレーニングをしていた。タイガースの選手にはわずかな調整機関しか与えられず、6月の開幕を迎えた。感染症拡大のリスクを避けるため、名古屋以西のチームは関東遠征からはじまった。それでもドラゴンズとカープは早目にホームグラウンドに戻れた。タイガースは開幕から5カード連続でビジターとなった。
 悪条件がそろった。ジャイアンツには悪夢の開幕3連敗を喫し、最後のビジターカードであるカープ戦でやっと今季初めての連勝をした。雨で第一試合を流したのが転機となった。甲子園に戻ると、それまでの不振が嘘のように勝ちまくった。クローザーをまかされていた藤川が打ちこまれて二軍落ちしたが、スアレスがクローザーにはまり、先発の岩貞も中継ぎに回って、若い馬場や新人の小川も加わり、昨シーズン活躍していたが故障離脱の守屋と島本の穴を埋めた。エドワーズも故障で離脱したが、先発候補だったガンケルが中継ぎで力を発揮した。先発投手陣は西勇、青柳、秋山を軸にガルシア、移籍の中田、岩田、藤浪などでやりくりをした。軸となる3人はともに活躍したが、それに続く先発投手陣が見劣りしたのは否めない。
 打線は、開幕当初チームを引っ張ったマルテが故障離脱。しかし後釜の四番に座った大山がホームランを量産し、リーグ2位の成績を残した。マルテに代わって昇格したサンズは一時は得点圏打率5割を越す活躍を見せ、四番にも名を連ねた。ボーアが勝負弱さを見せたのは誤算だったが、控えでは陽川が持ち前の長打力を発揮したほか、梅野の故障離脱の際は坂本がホームをまかされてリード面でチームを支えた。高卒2年目の小幡が北條や木浪に代わり先発で起用されると、守備面でセンスの良さを見せた。開幕当初は不調に陥った近本も立ち直り、打線の牽引車となった。
 首位を走るジャイアンツを追う体制が整ったところで、チームから新型コロナ感染者が出、中継ぎの勝ちパターンだった岩崎と岩貞が離脱した。アナを踏めた藤浪が、リリーフで生き返った。スアレスと競争するかのように160キロの剛球を投げ込んだ。
 小幡や高卒新人井上の台頭で糸井、糸原といった主力も立ち直り、終盤は好調を維持し、2位まで順位をあげ、連敗し始めた首位シャイアンっに迫っていったが、最終的には逃げ切られてしまった。
 藤川球児の引退、能見、福留、上本らベテランを戦力外とした。期待に十分添えなかったボーアも退団。しかしドラフトでは4球団競合の逸材、近代の佐藤輝を矢野監督がひきあげた。新型コロナ禍にもっとも振り回されたのが今季のタイガース、次いでパ・リーグのマリーンズだったか。ただマリーンズと違い、タイガースは控えの選手がほぼ拮抗した力をもっていて、層が厚くなってきたことを示した。
 矢野監督は来季も゜予祝」を続けるという。予定通りにシーズンが始まれば、今季よりも好成績をあげられる。それだけの土台作りはしてきたいる。
 タイトルホルダーは2年盗塁王の近本、最多セーブのスアレス。ベストナインには選出される選手はいなかったが、梅野が3年連続のゴールデングラブ賞を獲得した。
 今季通算60勝53敗7分で勝率.531で2位。優勝したジャイアンツとは7.5ゲーム差。3位ドラゴンズとの差は1.0ゲーム。

愛すれどTigers年間MVP
投手……西勇輝 移籍2年目で開幕投手を任されると、クオリティスタート率はリーグ最高という安定感を見せ、11勝という結果を残した。藤川、能見が退団した来季は名実ともにエースとしてチームを牽引してくれることだろう。。
野手……大山悠輔 大器がついに覚醒。一時は本塁打と打点の両タイトルを奪えるかというところまで成績をのばした。もともと定評のあっった守備力も向上し、チームの中心選手として周りからも認められる存在となってきた。来季はキャプテンとしてさらにチームを牽引していく。

 3位、2位と順位をあげてきた矢野監督。今季は新型コロナウィルス禍のもと、かなり苦しい戦いを続けなければならなくなったが、序盤のつまづきさえなければジャイアンツと互角の戦いができたはず。ボーアに代わり、韓国の三冠王ロハスJr.を獲得、メジャー経験のある、マリーンズのチェン・ウェインとも合意し、米国移籍をにおわせていたスアレスも残留。金銭トレードでジャイアンツから山本泰を獲得。戦力外ではかつてのドラフト1いのホークス加治屋とドラゴンズ鈴木翔を補強。FA戦線には参入せず、伸びしろのある若手を鍛え上げる方向で来季は優勝を狙う。大山、近本、藤浪、北條、木浪らが脂の乗る時期に差し掛かってきたのも大きい。今季の失敗を糧に、来季は頂点にと期待したい。

(2020年12月21日記)


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