愛すれどTigers


2024年を振り返って~アレンパならず岡田監督退任

 昨シーズン、岡田監督は変わったと私は書いた。2年目を迎え、私はそれを撤回せざる負えなくなった。岡田監督は前回のタイガース監督時代、そしてバファローズ監督時代と変わってなかったのだった。
 うまくいったときの頑固さをはうまくいかなかったときにも引きずり、コーチ陣につらく当たり、ここというところで「普通にやったらええんや」の口癖とは反対に、悪手を打って追いつめられる。連覇できなかった原因の一つにそれがあげられる。自分は悪くなく、コーチや選手を追い詰める。昨シーズンがうまくいきすぎて日本一となったため、それがより助長された。
 オープン戦からその予兆は現れていた。故障が癒えていない大山を4番打者として使い続け、打線は低調に。大山を二軍に降格させ、森下を二軍に降格させ、佐藤輝を二軍に降格させた。にもかかわらず打撃面で結果の出なかった中野は使い続けた。大山を外して原口を起用し勝てたにもかかわらず、原口は次の試合からまた控えに戻された。シーズン終盤、先発要員の村上や伊藤将をリリーフに回したり、桐敷にイニングまたぎをさせたり、近本を4番打者に起用し続けた時期もあったりと、「普通」でないことをしてことごとく失敗した。
 それでもあと1歩で優勝というところまで踏みとどまったのだから、チーム全体の力は連覇を狙えるところまでついていたといっていいいだろう。特に森下と前川の成長は特筆すべきもの。森下はプロ2年目とは思えないほど、チームに欠かせない主軸になった。前川は高卒3年目にして1シーズン一軍で活躍し、クリーンアップも経験した。
 打線は低調だったが、投手陣、特にリリーフの踏ん張りで交流戦までは首位をキープし、交流戦では成績を下げたが、森下、大山、佐藤輝が揃った後半は打線もつながり首位を走るカープを追い上げた。そのまま逆転優勝もあり得ると思わせた。誤算はカープの失速だった。9月のはじめは首位を走っていたカープがジャイアンツに3連敗し、ジャイアンツに勢いがついた。ここで星のつぶしあいをしてくれていたら、タイガースが一気に抜け出せるチャンスだった。甲子園でのジャイアンツ2連戦を1勝1敗に終わったときに、岡田監督の気持ちが折れたか。あるいは体調がここから悪化し、気力もまた持たなかったか。9月後半の岡田監督は、顔色もどす黒く、頬はこけ、どう見ても優勝を狙うという覇気がみられなかった。そこでコーチ陣や選手たちがもうひと踏ん張りしていれば、とも思うが、負けるたびにコーチや選手をこき下ろす談話を発する監督のためにどこまで選手がついて行けただろうか。
 先発投手陣は村上が昨年ほどの安定感を見せられなかったが、才木と大竹、西勇は安定した投球を見せたし、なによりビーズリーが一時は無双状態。そして高橋の復帰も大きかった。ただ、伊藤将は新人以来3年間のフル稼働の疲れからか球が高く浮いて打ちこまれ、それでも岡田監督は頑固に起用し続けた。もう少し早めに二軍で再調整させれば終盤、復活したかもしれなかったのだが。青柳も期待を裏切った。本来コントロールで勝負する投手ではないのに、コントロールを気にしすぎて自滅する場面が多くみられた。また、西純や門別も期待にこたえられなかった。それでもローテーションを崩して先発陣の負担を大きくさせなかったのが2位を確保できた主因だろう。
 リリーフでフル回転たのは桐敷と石井。新外国人のゲラも岩崎とのダブルストッパーとして期待通りの活躍を見せてくれた。岩貞、島本ら左腕のリリーフ投手陣の不振が大きく、加治屋も二軍落ちした後は一軍に復帰できなかった。湯浅は難病で投球もままならず。ただ、漆原と富田はリードされている場面でよく投げた。ここに新人の石黒がもっと早く戦力になっていれば局面も変化したか。及川の起用法も中途半端になってしまった。
 打線では、中野の不振が響いた。岡田監督もシーズン後半は近本が出塁すると必ず中野にはバントを命じていたが、それだけ打撃に信頼がおけなかったということだろう。森下、大山、佐藤輝は不振の時期もあったが、いずれも得点圏打率が高く、近本がチャンスを作り、この3人にまわれば得点が期待できるという形はできていた。ただ、梅野と木浪が打撃不振に陥り、下位打線でチャンスを作るという形は崩れてしまった。木浪が怪我で外れた間に小幡の台頭も見られたが、やはり故障で欠場。まだ怪我から万全の体調に戻っていない木浪を使い続けたのも首をかしげざるを得ない。なぜ植田や熊谷にチャンスを与えなかったのか。ここにも岡田監督の悪い面である頑固さが見えた。
 また、ノイジーとミエセスの両外国人打者を見切るのも早すぎなかったか。それならばなぜ新外国人野手を獲得しておかなかったかという、選手補強面での疑問も抱かせた。
 CSではベイスターズに敗れ、日本シリーズの連覇の夢も断たれた。ただ、この時期の岡田監督は明らかに体調不良で、とても指揮をとれる状況ではなかったと思われる。そこは同情せねばなるまい。
 契約通り、岡田監督は2年で退任となって、藤川球児監督が誕生した。指導者としての経験がないという不安はあるが、コーチ陣と選手たちとのコミュニケーションを秋季キャンプでよくとっており、選手たちもフレッシュな気分で臨めそうだ。
 今季通算74勝63敗6分の勝率.540で2位。優勝したジャイアンツとは3.5差。3位のベイスターズとは4.5差。近本が最多盗塁、桐敷が初タイトルとなる最優秀中継ぎ。ベストナインには外野手で近本が選ばれゴールデングラブ賞には外野手で近本が選ばれた。また、近本がスピードアップ賞の野手部門を受賞した。二軍では、首位打者に井上、最高出塁率に遠藤、最多安打に高寺。

愛すれどTigers年間MVP
投手……桐敷拓馬
 桐敷の70試合登板で被本塁打0は特筆すべき成績。勝ちパターンのセットアッパーとして、またリードされている場面で試合を引き締める役割としてフル回転。桐敷の奮闘がなければ2位にはなれていなかっだろう。来季にむけ、疲労をしっかり回復させてもらいたい。
野手……森下翔太
 成績で言えば近本が一番の活躍を見せたのだが、ここぞというところでの印象は森下の方が強い。2年目のジンクスをものともせずにチームになくてはならない存在になった。この調子で来季も佐藤輝や大山、前川とともに優勝を目指して活躍してもらいたい。

 FA宣言をせずに坂本と糸原は残留。FA宣言をしたうえで大山と原口も残留。それだけの魅力のあるチームになったのだと感じる。戦力外となった加治屋はイーグルスに、岩田はベイスターズに、遠藤はバファローズに移籍。高濱は、ファイターズで引退の江越とライオンズで引退の陽川とともにタイガースアカデミーのスタッフに。引退した秋山も球団に残った。引退選手のセカンドライフに関してもケアできる体制があるのは素晴らしいことだ。さらに、尼崎にファームの新球場と施設も作られ、若手選手の育成にもより力を入れている。FAなどで他チームの選手をかき集める時代は過ぎた。ベイスターズを戦力外となった楠本を獲得し、現役ドラフトでは浜地がベイスターズに移籍となったが、ジャイアンツの畠を獲得。新外国人投手にネルソン、野手にヘルナンデスを獲得。ドラフトでは社会人野球や独立リーグから多くを指名したが、高卒ながら2位で指名した今朝丸に期待がかかる。あくまでも現有戦力の底上げと育成がタイガースの方針として固まってきた。藤川新監督がどのような野球をするのか、それは春季キャンプのレポートを見てからにしよう。

(2024年12月28日記)


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