読書感想文


カナリア・ファイル3 死返玉
毛利志生子著
集英社 スーパーファンタジー文庫
1998年5月10日第1刷
定価533円

 「カナリア・ファイル2 傀儡師」に続く第3弾。
 今回は謎の組織「綾瀬」がわの内状が中心になって物語が展開される。「綾瀬」でも有数の呪術師・梓が、翠という巫女の素質を持った少女を病から救うために「カナリア・ファイル〜金蚕蠱〜」で登場した大きな力を持つ少年・耀を「綾瀬」につれて帰ろうとする。彼女の協力者たちは私欲を満たしたいがために彼女に力を貸し、耀と姉の花映は囚われの身に。
 呪術師有王と御霊神である匠は二人を救うために「綾瀬」に侵入する。これまでの2冊では不明であった謎の組織の様子を少しずつ明らかにしていく、その最初のエピソードというわけだ。組織であるからいろいろな人間がいる。その組織の実体がどうであれ、内部批判をする者もいれば、全て組織の考える通りに動くわけでもない。そのあたりを描きたかったのかな。
 あとは、弱い者を思い遣るということが人の心にとっていかに大切かというメッセージをかなりストレートに押し出している。押し付けがましくないのはいいが、説教臭くなるのは、嫌だなあ。もっとも、若い読者は説教臭いものを好むかもしれない。
 完全に続き物になってしまったので、前2冊を読んでないとわかりにくくなった。版元も本腰を入れてこの作者を売り出すつもりなのかもしれない。

(1998年6月15日読了)


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