「闇をあざむく龍の影」に続くシリーズ9冊目(外伝を含む)。外伝の短編集としては「くちづけよりも熱い拳」に続く2冊目となる。短編4本と書き下ろしの中編1本が収録されている。
5本中では「殷雷の最期!!」がアイデア、構成ともに秀逸。時を遡る力を持つ宝貝を手にいれた女性が博打に勝って富を手に入れるために宝貝を悪用する。和穂たちに取り返されるのを恐れて、時を遡り和穂たちを罠にかけたり異なる時間を逃げ回ったりする。しかし、彼女は時の迷路にはまり込んで……。タイムマシンものとしてはそれほど目新しいものではないが、タイムパラドックスを効果的に使い、結末も救いのあるものになっている。この作者にはSFにも挑戦してほしいと思わせる作品だ。
書き下ろしの「切れる女のおとぎはなし」は典型的な生け贄ものを逆手にとった佳編。短編のひとつに登場した人物を活用して、一冊の本としてうまくまとめている。わざわざ短編集用に書き下ろすのなら、こうあってほしいと思わせる。
このシリーズももっと続けて読みたいが、新しい設定の作品をこれとは別に読んでみたくなってきた。これで手一杯なのだろうか。そうでなければぜひ書いてほしいものだ。
(1998年10月29日読了)