「順列都市 上」の続き。
ダラムとともに永遠の電脳空間、順列都市にコピーを送り込んだマリアは、代価として大金を受け取る。しかし、ダラムはマリアと関係を持ったあと、自ら死を選ぶ。なぜ死を選んだかというところにこの作品に込められた著者のメッセージを見るような思いがする。
さて、順列都市に行ったマリアのコピーは、突如眠りからさまされて、自分の作った仮想世界の生物が進化した姿を見せられる。彼らの世界はが順列都市を走らせるOSを浸食し、永遠性が否定される事態に陥る。その生物たちが創造主としてマリアを認めるかどうかに、順列都市の命運がかかってくる。
著者がここで示したロジカルな仮想世界という設定には唸らされる。進化した生物たちが順列都市に生きるコピーされた者たちよりもロジックとしては強い存在で、そのためにコピーたちの永遠性が否定されていくという発想が実に面白い。デジタル化された世界や人間たちを最後までデジタルな存在として描ききっているわけだ。
「宇宙消失」で示されたアイデンティティーの問題は、本書でも再び提示されている。人間が持つ実存への根源的な不安を、ハードSFの枠組みの中で、驚くべきアイデアを次々と用いて描き出す著者の力業にまたしてもやられてしまった。
(1999年11月14日読了)