読書感想文


カナリア・ファイル9 魔来迎
毛利志生子著
集英社 スーパーファンタジー文庫
2000年2月10日第1刷
定価533円

 「カナリア・ファイル8 憑依に続く第9弾で、シリーズ完結編。
 耀の体を器にした綾瀬広野。耀もそれを受け入れつつある。それは、耀が口にしたことがなんでも具現化する「カナリア」である自分を嫌悪しているからであった。有王は耀の精神世界に入り込み、耀に広野を拒否させることで広野を追い込む。綾瀬の巫女、真美夜に憑依した広野との壮絶な戦いの後に残ったものは……。
 大団円とすることを潔しとせず、戦いの中で刻々と変化していった人間関係などを自然な流れのままに書き込み、失われたものの大きさを読者に突きつけるように物語を閉じている。その余韻の深さは、この物語の結末にふさわしい。
 この物語の鍵となるものは、「依存」ではないかと思う。自己の確立をテーマとして描きながら、人が何かに依存せずには生きていかれない現実が物語のあちこちにちりばめられているのだ。依存する対象により善とも悪ともなりうる、そのような姿が。
 デビュー以来2年半にわたって刊行されてきたこのシリーズは、あまたあるヤングアダルトの伝奇アクション小説の中でも、大きな収穫として数えられるものだと思う。
 完結を機に全巻を通して読んでみてはいかがであろうか。お薦めのシリーズである。

(2000年2月5日読了)


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