「ウィーン薔薇の騎士物語 2 血の婚礼」の続刊。
フランツたち「薔薇の騎士四重奏団」は、狂王ルートヴィヒ二世の御前音楽会に参加するためのオーディションに出場する。そこにはジルバーマン楽長の孫、クリスタもソプラノ歌手として出場していた。オーディションで目を惹いたのは、ルートヴィヒ二世の若い頃そっくりなテノール歌手で、その名もワーグナーの楽劇の登場人物の名を持つヴァルター・フォン・シュトルツィンクであった。彼のパトロンのレンベルク伯は彼がルートヴィヒ二世の血をひくと公表する。ヴァルターをレンベルク伯に引き合わせた小間使のミカエラは、献身的に彼に尽くす。そんな折、ヴァルターがルートヴィヒ二世の落胤であるという証拠書類の入った小箱が紛失し……。御前演奏会にまつわるいろいろな人物の思惑に、フランツたちは否応もなく巻き込まれていく。
第2巻から再び「ウィーン薔薇の騎士物語 1 仮面の暗殺者」のようなミステリ・タッチに戻る。ルートヴィヒ二世そっくりのワーグナー歌手の登場という神秘めいたプロローグから、一転して宮中の陰謀ものにストーリーが変わるところが面白くはあるが、もう少しヴァルターの神秘性で話を引っ張っていってくれた方が、ファンタスティックな雰囲気があってよかったのではないかとも思う。
本巻ではワーグナー歌手に関わる陰謀がストーリーの軸となり、フランツたちはどちらかというと傍観者の立場となっいる。ストーリーの展開上やむを得ないことではあるが、フランツたちが事件に巻き込まれる必然性にやや乏しい気がした。次巻はぜひ「薔薇の騎士四重奏団」を全面に押し出した展開にしてほしいものである。
(2001年1月6日読了)