「姫神様に願いを 〜秘恋夏峡〜」に続くシリーズ第13弾。
「Prayer of Shine 姫神様に願いを 光の祈り人」の続編に当たる平安時代編である。
平安朝を、再び雷神が襲う。関白藤原忠平は宮中で謎の女房に袖をつかまれ、その息子たちも次々と悪霊と遭遇する。忠平は菅原道真が再来したと判断するが、その道真の霊は安倍晴明の屋敷で寝起きをしている。道真の名を騙る者は誰か。道真は伏見稲荷に参宮した折に蘭と名乗る謎の女人と出会う。彼は蘭が都を騒がす謎の霊と判断、熊野につれていき浄化させようとする。彼女は平将門の妻であると告げる。将門といえば、晴明の母、葛葉が彼と父の保名を捨ててまでして行動をともにした人物である。将門の霊は本当に都に仇をなそうとしているのか。晴明は蘭を浄化できるのか。
本書では、最初に深草の狐精が保名にまとわりつくエピソードが語られ、続いて悪霊の物語になる。一応関連は持たせようとはしているが、一本の長篇として読んだ場合、まとまりはあまりよくない。雑誌連載を文庫化したものだが、作者はまだ長篇の連載に慣れていないということで構成を失敗したのかもしれない。
狐の部分は思い切ってカットして、悪霊と晴明の対決、そして蘭と晴明の心のふれあいに焦点をしぼった方がよかったのではないだろうか。この部分に関しては、史料を存分に使い切り、リアリティのある平安時代を表現することに成功しているからだ。
あと、地の文の饒舌さも気になったところ。登場人物の心理描写ももう少し刈り込んだ方がうるさくなくてよいだろう。
本書でも作者の将来性を感じさせる部分が随所に見られた。私はこの作者にはさらにステップアップしてほしいと思っている。そろそろ独自の史観なども織りまぜて、さらに本格的な伝奇小説を書いていってほしいのである。
(2002年3月9日読了)