読書感想文


デス・タイガー・ライジング4 宿命の回帰
荻野目悠樹著
ハヤカワ文庫JA
2004年7月31日第1刷
定価740円

 「デス・タイガー・ライジング3 再会の彼方」の続刊。
 膠着する戦況を打開しようとするアーサ・ミツタにとって、青玉艦隊のゾフィーヌ・クローゼンバーグが行おうとしているベルゼイオンとメッサージュの極秘講和交渉は邪魔もの以外のなにものでもない。アーサは〈虎〉部隊を使って艦隊を攻撃し、講和交渉を中断させ、さらに艦隊を乗っ取ってアル・ヴェルガスに突入しサイゴーンの首都に旗艦を墜落させようとしていた。青玉艦隊乗っ取りに成功したアーサは、作戦を実行に移しはじめる。作戦の全容を知ったキバ、そしてミレは、なんとしても一般人を殺戮するこの作戦を阻止しようとする。しかし、二人の力は微力であり、暴走するアーサと〈虎〉部隊は艦隊の全権を握っている。果たして2人はアーサの作戦を阻止することができるのか。そして、〈虎〉となって失われたキバの感情は蘇るのか。2人の愛の行方は……。
 悪役は最後まで悪役らしく、主役は雄々しく戦い、悪役は自分の力を過信したが故に自ら滅びの道を歩む。この物語の定型を踏まえた上で繰り広げられる戦いの趨勢の描写は、まさに手に汗握るものとなっている。そして、読者の期待を裏切らない形での愛の成就。あまりにもストレートなので気恥ずかしくなってしまいそうにもなるけれど、ここまでしっかりと組み立ててあるメロドラマならば、私はかまわないと思う。というよりも、大デュマの昔から、ロマン(小説)とはこういうもののことをもともと指していたのだと思うのである。小説の面白さの原点ではないだろうか。
 本書は『双星記』の結末の後日談にまで話が進んでいる。ランディスヴァーゲンがどのような形で統治していくのかの一端が示されている。作者には今後もこの世界をどんどんと書き続けていってもらいたい。次回シリーズを楽しみに待とう。

(2004年7月1日読了)


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