ぼやき日記


3月21日(金)

大阪府立体育会館
 今日は待ちに待った相撲見物。前売り開始早々に電話予約をし、正面の枡席を手に入れる。枡席は定員4名。私の他は、妻と、そして林譲治さん夫妻をお誘いした。奥様はかなり格闘技がお好きで、本場所にも何度か行っているとのこと。
 私は、実は本場所を見に行くのは初めて。地方巡業を子どもの頃に連れていってもらって以来、生の相撲は見てへんのです。相撲ファンとしては欠落したものがあるわけですね。まあ、これまでは大阪場所の時期に仕事の忙しいのが重なっていたからで、転勤のおかげで相撲を見に行く余裕が初めてできたというわけ。
 朝から支度をして、10時には難波に到着。大阪府立体育会館に行こうとすると、私の目の前を若いお相撲さんたちが歩いている。鬢付け油の甘い香がただよう。取的さんの先導で体育会館へ。幟が立ち並び、相撲気分はいやが上にも高まる。
 相撲は11時30分に序ノ口の取り組みが始まる。それまでは館内をうろうろして土俵の近くに行ったり、みやげ物を買うたり。錦絵コースターに錦絵絵葉書、相撲トランプにパンフレット、大至親方の相撲甚句CD、番付などなど。絵番付は製作者の松林モトキさんが売り場に座っていて、直筆でサインをしていただく。
 がらがらの体育館に、若い行司さんの「ノコッタ、ノコッタ」の声が響く。地元出身力士の知り合いだろう、時々掛け声がかかる。
大善最後の仕切り
 十両土俵入りあたりになると、人も増えてくる。今日はたまたま大善さんの現役最後の取り組みを見ることができた。気迫のこもった相撲で有終の美を飾る。左の写真はその最後の仕切り。この一番が終わった頃に、林さん夫妻が入場。奥様は双眼鏡を片手に「あ、舞の海がいる!」と向正面の解説席を発見したりと、熱心に観戦。幕内の土俵入り直前に妻がやっと現れ、これで4人揃った。
 お客が増えると掛け声も多くなる。後ろの椅子席で、栃乃花に声援を送る女性の迫力には参った。よく通る声で会場に響き渡る。栃乃花が闘牙を下すと、ものすごく喜んでいて、気持ちよかった。千代大海と魁皇、朝青龍と琴光喜の取り組みでは、魁皇や朝青龍に声援が集まるのに対抗して外国人のグループがそれぞれ千代大海や琴光喜に声援を送ったりとこれも楽しい。意外なことに、館内が人で埋まると行司さんの声が聞こえなくなる。
朝青龍の土俵入
 後ろの方ではあったけれど、正面から全体を見られるかなりええ席やったのがよかった。相撲も生で見ると力士の気迫が伝わってきてこっちも力が入る。
 弓取り式で前の客がぞろぞろ立ち上がったのと、意味のないところで座布団を投げるバカ者たちがいた以外は、実に楽しい相撲見物になった。
 打ち出しのあと、林さん夫妻と難波の韓国料理店へ。関西のSF作家が宮本武蔵を書いたらどうなるか、などなど歓談。思ったよりもゆっくりしてしもうた。こういう会食は実に楽しい。来年もまた来たい。
 ところで、帰宅してビデオに録画していた相撲を見たら、現場で見ていたのとかなり印象が違う。土俵上の力士から伝わってくる「気」がやっぱりテレビでは感じにくいのと、館内の空気が伝わってこないというところなのでしょう。
 ああ、楽しかった!

3月22日(土)

 これまで花粉の季節になってもそれほどアレルギーは出なかったんやけれど、今年はなんかひどい。食生活の変化はあるやろうと思う。なにしろ、それまでの9年間、栄養士さんがきちっとバランスを考えて献立を作った給食を毎日食べていたのに、今年からはコンビニの弁当やカップラーメンやパンをその日の気分で買うて食べるというように、昼食が変わった。これは大きい。それだけ身体の抵抗力がなくなったんやろうかなと思う。
 ただ、どうも杉花粉の花粉症やないみたいやね。杉花粉が一番飛散していた時期には、全然アレルギーらしいものは出んかったのに、杉花粉が減少し始めた時期に目が痒なる鼻はつまるくしゃみは出る。これは耳鼻科に行って検査をしてもらうべきやろうと思うたけれど、ちょうどいける時には耳鼻科が休んでいたりする。
 というわけで、鼻炎カプセルが手放されへんようになったわけです。もっとも市販の鼻炎カプセルは首から上にまわる水分を少なくするというような仕組みになってるらしく、鼻水は止まるし目の痒みもなくなるかわりに喉は乾く小便は近くなる。外出した時などトイレのある場所を確認しておいて見つけたらこまめに行くようにしとかんとあかんという、それはそれでやっかいなものではあるので、あまり頼らん方がええんやけどね。

3月23日(日)

 今日は京都まで墓参り。天候もよく、墓石に水をかけると吸い込むように水が引いていく。お彼岸最後の日曜ということもあって、墓参の人波も多い。祇園から四条河原町まで四条通を歩いていると、どこかの労組がデモをしている。反戦デモかと思うと首切り反対を訴え、増税反対を訴え、と、まあ労組の決起デモやったら当然のことやとはいえ、時節柄テーマを絞った方が道行く人の共感を得たのと違うかなと、論評しつつ横を歩く。大阪につくと、梅田の旭屋書店へ。DVDコーナーで今度は「プリンプリン物語」を見つける。「新八犬伝」と同様石山透さんの脚本で、物語をどんどんとふくらませていく楽しさがあって好きやったなあ。で、購入。あまり見てへんかったという妻に今度見せよう。文庫の新刊の平台で角川ホラー文庫の新刊をいくつか買う。なぜか小林泰三さんの「家に棲むもの」だけが一冊もない。売り切れたのか発行禁止になったのか。他の作家のものは全て揃うてるのに小林さんのだけないというのは面妖である。念のため角川ホラー文庫の棚に行って探してみたら、1冊だけ棚に残っていた。ということは、発行禁止でも回収でもなかったみたい。売れておるのでしょう。それならばめでたいことです。妻の話では、先日電車に乗っていたら若い男性が野尻抱介さんの「太陽の纂奪者」を読んでいるのを目撃したとか。うむうむ。風はよい方向に吹いておるぞ。

3月24日(月)

 俳優、天本英世さんの訃報に接する。享年77。死因は急性肺炎。
 天本さんといえば「死神博士」。仮面ライダーシリーズの悪の幹部のなかでも際立って存在感があった。というか、本当に怖かった。闇の中の黒いマントに研ぎすまされた風貌。悪役なのに、子ども心にもたまらない魅力を感じさせた。映画「麻雀放浪記」ではチンチロ部落の一員に、「怪盗ルビイ」では一転して実は善人の食料品店主。「キングコングの逆襲」のドクターフーも印象に残る。金子修介監督の「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」では謎の学者として出演、ファンをしびれさせた。
 私が子どもの頃、テレビのアップダウンクイズに出演したのをはっきりと覚えている。そこでの紹介は「スペイン通の俳優」というもので、そういう一面があることを初めて知った。確か賞金の使い道を聞かれて「郵便受けがないので郵便受けを買いたい」みたいなことを言うてはったとおもうが、記憶違いやったらごめん。なんにせよ、なんでそんなものをというようなものの名をあげていたはず。結局、あの時の天本さんは一問も答えへんかったんと違うたかしらん。それも天本さんらしいと妙に納得した記憶がある。
 ああいう個性の俳優は、もう二度と現れへんかもしれへんな。不思議な陰と、そして知性をたたえた怪優。死亡記事に「死神博士」が代表的な役としてあげられていたのも当然やろう。それにしても、死神博士が変身してイカデビルになった時はがっかりしたぞ。死神博士は怪人に変身したらあかなんだと思う。どうせ変身するならクトゥルーの神になってほしかったところやね。
 さようなら、死神博士。あなたほど恐ろしい悪の幹部は他にはいませんでした。あなたが悪の魅力を私たちに教えてくれたのです。
 慎んで哀悼の意を表します。

3月25日(火)

 転勤の決まった先生が荷物の整理をしている。引き継ぎの書類関係のやりとりもあって、私もクラブの付き添いだけでなくあれこれと仕事。昨年の今ごろは、私もああやってデスクの荷物を片付けていたのですなあ。箱詰めをして、自動車は持ってへんから運送屋に電話をして転勤先に期日指定で送ってもらうように契約をして……。転勤先に行った3月末は、桜が満開で、散り始めている木もあった。そう、昨年はとにかくむやみに暖かく、桜の開花も早かった。入学式の頃はほとんど散っていたよな。今年はまだつぼみがふくらみ始めたかなという程度。あれから1年。仕事で電話をかける時にもすんなりと今の学校の名前が出るようになった。転勤当初は前の学校の名前を言いかけて一瞬考えなあかんかったもんです。あれから1年。新入生たちもやってくる。演劇部の生徒たちは新入生歓迎公演の練習をしている。新たに2年になる生徒たちも、自分たちだけで劇を上演できるまでになってきた。1年という時間の重みを感じるのでありますね。

3月26日(水)

 大阪市営地下鉄の堺筋線、天神橋筋六丁目駅(略称・天六)を利用してますと、北へ行く電車の中には天六止まりというのがあるのですね。で、この電車がホームに入ってくる時の、駅員のアナウンスが実に気になる。「この電車はどこにも行きません。ご乗車にならないで下さい」と言うわけやね。「どこにも行かへんかったら、次の電車が入って来られへんやんけー」と心の中で毎回ツッコミを入れるわけで。たぶん、私だけやなかろうね。他にも同じツッコミを入れてる人はいてるはず。ではその電車はホームに居座ってないでちゃんと空のまま発車してどこかに行ってしまう。今度は「車庫か始発駅に行くんやんけー」とまた心の中でツッコんでしまう。週に何回かは天六止まりの電車に出っくわすので、その度に同じツッコミを入れる自分が悲しい。これを読んでいる方で、天六駅を利用する方、同じツッコミを入れたことありません? 他の地方の方は、大阪にくる機会があったら、天六駅のホームで一度聞いてみて下さい。さあ、これで天六駅は大阪の隠れた観光スポットになるかも! なるわけないって。

3月28日(金)

 昨日は林譲治さんと会食。待ち合わせは江坂の喜久屋書店。前任校がこの近くということもあって、なじみの書店、やったんやけれど、なんと閉店するということで驚く。書店としては新刊も充実しているし棚揃えもよかっただけに、意外というたら意外。ファッションビルの4Fに入ってたんやけれど、どうも書店とファッションビルの相性はようないのかもしれんなあ。
 心斎橋のOPAには当初紀伊國屋書店が入ってたけど、すぐに撤退した。河原町OPAのオーム社書店もすぐに違う書店に入れ代わり、そこも撤退した。難波の無印良品のビルの上にはリブロが出店したけど、1年ともたず今はTOWER RECORDSが入ってる。
 心斎橋はともかく、河原町OPAや難波の無印良品の近くにはジュンク堂など他の書店もあるけど、そちらは撤退してへん。撤退してへん書店は、1Fからもう書店やからね。本を目当てにくるお客が中心やろう。ところが、ファッションビルの場合、他の店のついでに書店に寄るという客はかなり少ないのかもしへんな。本を目当てにした客はわざわざファッションビルの上のフロアまでは行かへん、と。つまり、ファッションビルのテナントとしては書店はあまり相性がようないという結論に達する。
 本が好きな者としては、これは実に辛い結論やなあ。おしゃれな若者は本なんか読まん、まあそれはええ。結局、マーケッティングの観点からテナントとして書店は不要となり便利なところに書店がでけんようになるということにもなりかねん。ただでさえ小さな駅の駅前にはちゃんとした書店がなくなっているというのに、人が集まるところにも書店はない、ではどもならんやないか。
 出版業界のはじっこにぶらさがっている身としては、これはつらいよねえ。ここでぼやいたからというて状況が変わるわけもなく。なんか、悔しいなあ。

3月29日(土)

 タイガース初勝利。これで選手のプレッシャーもとれて明日からはのびのびと動けるでしょう。やれやれという感じかな。くわしくは月曜日更新予定の「愛すれどTigers」で。

 今日の夜は妻といっしょに桜宮のOAPで行われた「さくら寄席」に。花見にちなんだ落語を桂雀々さんが2席。明日行われる「さくら狂言」とリンクした企画。
 前座は桂まん我「開口一番」。語り口など明るくテンポもよいけれど、上下への体の動かし方が弱かったりもする。なかなかの有望株とみた。続いて桂雀々「さくらんぼ」。別名「あたま山」で知られ、短編アニメにもなってアカデミー賞にノミネートされたことで有名なナンセンス落語。ナンセンスな部分にはいるところで「みなさん、ここで引かんといてくださいねえ」と観客の緊張を緩和させるところなど、工夫の仕方が師匠の故枝雀を思わせる。もともと明るい芸風だけに、ナンセンスな噺を無理なく楽しませてくれる。
 このあと、落語作家の小佐田定雄さん、狂言師の茂山逸平さん、そして桂雀々さんの鼎談。小佐田さんが落語「さくらんぼ」を狂言に仕立て、その再演を明日の「さくら狂言」で行う、それを盛り上げるという趣向。ナンセンスな狂言を逸平さんが紹介し、落語との違いを雀々さんが指摘する。そのやりとりが実に面白い。
 トリは桂雀々「鶴満寺」。あまり演じられない珍しいネタ。私はCDで桂文楽が演じたのを持っていて聴いたことがあるけれど、雀々さんの演出は寺男の酔いっぷりをオーバーに演じて笑わせるもので、かなり趣が違う。というか、文楽の「鶴満寺」はあんまり印象に残ってへんのですね。
 というわけで、久しぶりの落語を満喫。明日は狂言。アレルギー性鼻炎でしんどいけど、思い切り笑うて元気がでてきたぞ。

3月30日(日)

 今日は「さくら狂言」をOAPまで見に行く。もちろん妻といっしょ。昨日の「さくら寄席」とセットで見たためより楽しめた。
 最初は和泉流の若手による「棒縛」。ポピュラーな演目ではあるけれど、若手がのびのびと演じていて好感が持てる。続いては大蔵流で「縄綯」。茂山千之丞さんの太郎冠者が独り喋りをする場面がみもの。さすがは茂山家の重鎮、その何気ない表情づけなどで笑わせてくれる。オーバーな動きのものもいいけれど、こういう演技力を見せる演目も見ごたえがあっていい。
 休憩後、今日の目玉である新作「さくらんぼ」。落語の「さくらんぼ(あたま山)」を小佐田定雄さんが狂言化したもの。頭に桜を生やす男を茂山あきらさんが演じたのだけれど、飄々とした味があっていい。あたま山の池で釣りをする場面など、茂山七五三さんがノリノリで演じているのが楽しい。落語はすべて言葉で説明し、観客の想像力にまかせんとあかんけれど、狂言の場合、頭に満開の桜を乗せて登場するだけで笑いが起こる。視覚的効果の大きさというものを感じさせる。狂言というのはかなりナンセンスでアホらしい演目が多いけれど、大道具を使用せずに観客の想像力にゆだねるところと、小道具を使用して視覚的効果に訴えるところのバランスがそのナンセンスなものをうまく表現できるんやろうなあと感じた次第。
 いやもう、連日楽しませてもらいました。いやもう、笑芸はやっぱりよろしいなあ。昨年度は仕事で手一杯でなかなか落語を聞きに行く余裕がなかったけど、新年度はあちこち足を運びたいもんです。

3月31日(月)

 妻が朝から体をばりぼりばりと掻いている。ジンマシンが全身にできたという。「見て見て、鱗はえた。私は蛇女よ。あー痒いー」と私に見せる。鱗とはたいそうなけど、確かに背中からお尻から首筋からとにかくいたるところが蚊にかまれたみたいにぼこぼことふくれている。見るだけで痒そうや。「あー痒痒痒痒痒」、ばりぼりばりばりぼり。掻きむしらへんかと心配なくらい。仕事から帰ってきて聞いてみたら、全然治らんらしい。明日も治まらなんだら医者に行くよう勧める。頭皮にもできているらしい。「頭の中が痒いんだー、中島らもー」。苦しんでるんか喜んでるんかようわからん。
 ネットで調べたらこういう時は運動したらあかんらしい。常もよく寝る妻やけど、今日こそゆっくり寝てもらわんと。「痒いから眠れへんの」。うーむ、それも辛いなあ。
 ジンマシンということは、なにか原因があるはず。最近何を食べたか。ワインを飲んだ、蕎麦、海老、苺……。ジンマシンの原因になりそうなものは一通り口にしている。これでは原因が特定でけへんやないか。
 私は花粉症、妻はジンマシン。これからはヒスタミン夫婦と呼んで下さい。私も目が痒い。もっとも、こちらは医者に処方してもろうた目薬でかなり抑えられるんやけどね。

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