エースと呼べる投手には手も足も出ないが、二軍から上がってきたばかりの投手なら打てる。それでは連勝はまず無理。せめてカード勝ち越し、と願っても、1勝するのがやっと。負け方がなんとも情けない。選手のやる気が空回りしている。北陸遠征は2試合を雨で流し、金沢でのドラゴンズ戦で1敗。甲子園に戻ってジャイアンツ戦、1試合は完勝したが、残る2試合は惨敗で1勝2敗。今節は1勝3敗で負け数は29に達した。ベイスターズとともに完全にペナントレースから置き去りにされたタイガース。この現状に野村監督のコメントはいささか投げやり。このままずるずると行ってしまうのだろうか……。
◎ドラゴンズ10回戦……0−2
ドラゴンズの先発野口の前に内野安打1本、四球1つ、セ・リーグタイ記録の1試合16三振……あわやノーヒットノーランというみじめな敗戦。ハンセルは2回にゴメスの本塁打などで2点を失ったが、7回2失点は責められる内容ではなく、好投と言っていい。スライダーが冴えに冴えた野口をほめるべきだろう。何も言うことなしの完敗である。
◎ジャイアンツ10回戦……4−12
頼みの井川は初回に松井に2ラン、2回には塩谷二塁手のエラーで動揺し、元木に甘い球を流し打ちされてさらに2点を失う。3回には清原のホームランでさらに1点。3回5失点と今シーズン最悪の出来でマウンドを降りた。今季初登板のルーキー伊達は緊張したかワイルドピッチを連発して1失点。谷中は江藤松井の連続ホームランで3失点。大量得点に守られたジャイアンツ上原は6回まで4安打の完封ペース。意地を見せたのは桧山。7回、ライトスタンドに飛び込む大きなホームランで完封を免れた。さらには8回、條辺からクルーズが3ラン。4点差まで迫った時は、ジャイアンツのリリーフ陣の具合からさらに追いつく流れを感じさせたのだが、9回、遠山がマルティネスに3ランを浴びてその夢も消えた。遠山は二軍落ち。
◎ジャイアンツ11回戦……10−0
先発のカーライルは初回には2死一二塁、2回には無死満塁と大量失点のピンチを招いたが、速球で押しに押して無失点で切り抜ける。特に2回には2死で迎えた清水にフルカウントからファウルで粘られ苦しかったが、一邪飛に打ち取りこれが流れを引き寄せた。4回、故障が癒えて二軍から昇格したばかりの河原からペレスの2ランと桧山の2ランで4点先制。河原には毎年復帰即完敗というパターンで毎年苦しめられていただけに、この2発は効いた。赤星の三塁打で5回にも1点を加え、6回には藤本、八木、濱中がタイムリーを放ち3点を追加して、河原は降板。8回、西山からも星野修、赤星のタイムリーで2点を追加して、とうとう10点に。一方、投手陣も7回から1イニングずつ弓長、伊藤、成本のリレーでジャイアンツ打線を完封。もっとも、長嶋監督は河原が打たれても「これだけ投げられれば大丈夫」と涼しい顔。どうやら捨てゲームだったらしい。喜んだタイガースファンの気持ちはどうなる。こういうコメントを平気で発しているご本人が野球人気を落ち込ませているのに、新聞紙上で野球人気の低下を憂える記事などよく発表できたものだ。
◎ジャイアンツ12回戦……3−7
初回、先頭打者の濱中が入来からいきなりホームラン。主導権を握った。さらに3回、内野安打の濱中を赤星が送って作ったチャンスにクルーズがみごとに一塁横を抜ける当たりを放つ。ところが、これを二塁手の仁志が横走りに走ってキャッチ、素早く一塁に送ってアウトに……。この当たりが抜けていれば完全にタイガースペースとなったのだが、このプレイが流れを変えた。直後の4回、福原は三塁打の元木を松井の犠牲フライで返されて同点に追いつかれると、5回には4安打を集められ打者一巡の猛攻で4失点。ただし、清原に打たれた二塁打などは、内角いっぱいに入ったストライクをボールと判定されストライクを取るために球を置きにいって打たれたものだけに、同情の余地はある。一方の入来は明らかなボールをストライクと判定してもらってピンチを逃れていたのだから、この試合、主審の笠原の気まぐれな判定に泣かされたと言ってもいい。それでも7回には入来を攻め立て赤星のタイムリーで1点返し、8回には岡島から広澤がタイムリーを打って2点差まで詰め寄ったのだから、まだ勝機はあった。伊達、弓長も中継ぎの役割をよく果たし追加点を許さない。特に弓長は松井、清原、高橋由を三者連続三振という素晴らしい投球で抑えたのだ。9回、葛西が登板。江藤の二塁打、阿部への死球、代走川中の盗塁を阻止して流れを変えるかと思われたが二岡への四球、仁志の左前打で一死満塁のピンチを招く。ここで清水を迎え、野村監督が出したリリーフは谷中! 対ジャイアンツ通算防御率10点の投手をつぎ込む場面か! 吉野はどうした。面出も一軍に上がってきているぞ。そらみろ、清水に押し出しの四球、元木の内野ゴロで2点を失い、これで逆転の芽は摘まれてしまった。野村さんの残したコメントが「(福原は)あんなもんでしょう」……。監督のコメントがこれでは、そら勝てんわ。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……バディ・カーライル とにかく攻めて攻めて攻め抜く姿勢がジャイアンツ打線を迫力で圧倒した。福原あたり、この姿勢をよく見て参考にしていただきたい。
野手……赤星憲広 脇を締めて振り抜く打法が身について、打球が鋭くなってきた。あとは盗塁をどんどん試みてほしい。失敗を恐れず、自分のセールスポイントをもっともっと全面に出せ!
ジャイアンツのナインに一言いいたい。スワローズの藤井投手が大差のついた場面で打ちにいって全力疾走した行為を「球界の常識を知らない」と野次るのなら、開幕戦で行った17点とった後もなお送りバントでランナーをすすめるという作戦については自チームの監督を野次らないのか! 私はその時点でちゃんと指摘しているぞ。全力疾走してどこが悪い!
話をタイガースに戻す。
野村監督はこの際だから、濱中、赤星、ペレス、クルーズ、桧山、今岡、矢野(山田)、藤本という打線を固定して10試合くらい続けてはどうか。負けはしているけれど、この形の打線で若手を中心とした打者たちが少しずつよくなってきている。ここまで負けているのだから、じたばたすることもあるまい。打線を固定することによりつながりが生まれ、控えの選手も落ち着いてベンチで出番を待つことができる。次節は相性のよいカープ、ベイスターズとの6連戦。きっと何かが生まれると思うのだ。
(2001年5月28日記)