いよいよ後半戦開幕。東京ドームのジャイアンツ戦は2勝1敗と負け越したもの、甲子園のスワローズ戦は1勝2敗と負け越した。同一カードの負け越しは、6月1日のホークス戦で連敗して以来だから、およそ2ヶ月ぶりのこと。しかし、2位のドラゴンズが好調で、引き分けをはさんで11連勝継続中。その差を3ゲームとしたところで、長期ロード突入ということになった。打線が全体に疲れ気味なのと、相手チームがエースクラスをぶつけてくるということもあって、なかなか点が取れない。投手陣はおおむね好調を維持しているだけに、かなり厳しい雰囲気で今節を締めくくることになった。とはいえ今節は3勝3敗。56勝37敗4分と19の勝ち越しを維持しているのだから、慌てる必要もないだろう。岡田監督のいうように、敵を気にせず、1試合ずつしっかりと取っていくことが大切なのだ。
◎ジャイアンツ10回戦……9−3
ジャイアンツが必勝を期して立てたエース上原に、タイガース打線が初回から噛みつく。鳥谷がライト前ヒットで出塁し、シーツがセンターバックスクリーンに先制の2ラン! 井川は3回裏に仁志にレフトスタンドにソロホームランを運ばれて1点差に迫られるが、4回表、二塁打の金本を置き今岡がセカンドゴロで金本を三塁に進める。これで気持ちが楽になった桧山が、ライトスタンドに突き放す2ラン! 5回裏には清水に三塁打を打たれ、若い矢野の内野ゴロの間に1点を返されるが、直後の6回表、二番手内海のかわりばな、シーツのセンターへのソロホームランで再び3点差に。7回裏、清原にライトスタンドに技ありのホームランを打たれ、井川は3失点でリリーフにあとを託した。8回表、三番手シコースキーを襲う。2死から金本と今岡が連打でチャンスを作り、桧山と矢野の連続タイムリーで3点を追加した。さらに9回表、岡島からシーツがこの試合3本目となるソロホームランをレフトスタンドに運び、決定的な9点目を追加した。8回裏は藤川が、9回裏は久保田がそれぞれ三者凡退で締めくくり、後半戦の最初の試合を白星で飾った。タイガースの1試合3ホームラン打者は2002年4月のアリアス以来となる。
◎ジャイアンツ11回戦……2−5
苦手の高橋尚を初回に攻略した。赤星がセンター前ヒットで出塁し、シーツの内野安打、金本の四球で満塁とする。ここで今岡がライト前に2点タイムリー。しかし、後続を断たれて一気に大量得点といかなかったのが尾をひいた。福原は、1回裏、阿部にライトスタンド上段に運ばれる特大のソロホームランを浴び、1点差とされ、3回裏には投手の高橋尚にヒットを打たれてチャンスを作られ、この試合1番打者に起用された鈴木の二塁打で同点に追いつかれると、続く二岡にレフトスタンドに勝ち越しのホームランを与えてしまった。タイガース打線は、2回以降高橋尚を打あぐみ、4回表に1死一二塁のチャンスを作ったが、福原に敢えて強打させるもセカンドゴロ併殺に終り、これが勝負の流れを決めてしまった感じがする。8回裏には二番手江草がローズにタイムリーを打たれてだめ押しの5点目を奪われる。ジャイアンツは8回から久保、前田、林とつなぎ、タイガース打線の反撃を断ち切った。
◎ジャイアンツ12回戦……9−1
タイガースが2回表の攻撃だけで試合を決めた。マレンから金本がヒットで出塁すると、今岡の打席の時に阿部がパスボールでランナーを進め、その今岡がセンターへタイムリーヒットで先制する。二塁を欲張ってタッチアウトとなり、スペンサーの三振で2死ランナーなしとなったが、矢野がライトスタンドにソロホームランを放ち、2点目を奪う。関本、安藤の連打と赤星の四球で満塁とし、鳥谷がレフト前ヒットで3点目をたたき出すと、続くシーツはセンター前に2点タイムリー。とどめは金本の右中間スタンドにライナーで飛び込む3ラン、と思ったら、今岡がレフトスタンドに9点目となるソロホームランで決めた。ジャイアンツは3回以降、シコースキー、内海、ミアディッチ、岡島の継投でタイガース打線を無得点に抑えたのだから、マレンの乱調が大きかったといえるだろう。一方、タイガースの先発安藤は、大量得点に気をゆるめることなく、3回裏に代打十川孝のプロ入り初ホームランを許しただけで、あとはテンポのよい快調な投球でプロ入り初の完投勝利を飾った。先発投手陣でもっとも安定しているのは、右手は安藤、左では下柳ということになる。
◎スワローズ12回戦……5−0
初回、川島からラッキーな先制点を奪った。赤星が内野安打で出塁し、古田のパスボールで二塁に進む。そして鳥谷がレフト前に運んで赤星を迎え入れた。しかし、川島は伸びのある速球を主体にして6回までタイガース打線を沈黙させた。こういった1点差の重圧に強いのがベテランの下柳で、6回まで投げて3安打無失点の好投。7回には藤川がきっちりと抑える。7回裏、二番手吉川から藤本が二塁打でチャンスを作り、三番手山部から片岡が四球を選び、チャンスを広げた。鳥谷は投手を襲うライナーを放ち、山部が二塁手の前に弾く。これで藤本が生還し、待望の追加点。四番手河端が登板すると、すかさずシーツがレフトスタンドに3ラン! 8、9回は江草、橋本が締めてみごとな完封リレーで初戦を飾った。
◎スワローズ13回戦……0−13
スワローズの若手、館山の伸びのある速球をタイガース打線はかんたんに打ち上げてしまう。一方、タイガースのブラウンは、初回に岩村の2ラン、4回に宮本の3ランで5失点。これで試合は決まった。三番手能見は6回表にラミレスのタイムリーで1点を失い、8回表には5連打3失点でマウンドを降りる。ここで交代した桟原は三者三振と好リリーフを見せたが、9回表、2死を取ってから、宮本を三塁ゴロに打ち取るが、今岡が雑なグラブさばきでこれをそらして出塁させると、岩村を歩かせ、ラミレスにもヒットを許し満塁のピンチに。宮出の走者一掃タイムリー、リグスの内野フライを桟原と今岡がお見合いしてヒットにしてしまうと、古田がとどめのタイムリー。9回の失点は桟原にとって不運としかいいようがない。ブラウン、能見の「第六の先発」候補がそろって打たれたのが不安材料か。
◎スワローズ14回戦……1−2
杉山は毎回のようにランナーを許しながらも、要所を締めて無失点を続ける。一方の藤井は最高の投球。コーナーにびしりと投げ分ける投球で5回裏2アウトまで一人のランナーも許さない。その5回裏、タイガースの初ヒットはスペンサーのライトスタンドに突き刺さる先制ソロホームラン! 杉山もこの!点のあとは危なげない投球になってきた。しかし7回表、先頭の宮出を内野安打で出塁させると、1死後、古田のレフト前ヒット、土橋の三振の間にダブルスチールを決められる。代打ユウイチの打球は杉山の足下をすり抜けるセンター前ヒット。これで宮出が生還し、同点。二塁走者の古田はホームで刺し、逆転は防いだ。同点の展開で、タイガースはウィリアムス、スワローズは五十嵐亮を投入する必勝パターン。9回表、三番手の藤川が2死を取った後、伏兵リグスにレフトポール際に運ばれる決勝ソロホームランを叩き込まれてしまった。最後はスワローズのクローザー石井弘に抑えられ、惜敗。こうした競った試合で打線がチャンスを逃すというのは悪い時のタイガースのパターン。それにしてもこの3連戦、スワローズの投手はいずれもすばらしすぎた。こうなると打線はなかなか打てるものではないのだなあ。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……安藤優也 ジャイアンツからプロ入り初完投勝利。右のエースは福原ではなく安藤だと、私はここで断言したい。それくらい、安心して見ていられる投球内容なのである。
野手……アンディ・シーツ 大事な3連戦の初戦、ジャイアンツ戦もスワローズ戦も効果的なホームランを放って相手の戦意を奪う働きをした。バースが乗り移ったかのような活躍ぶりである。
次節は、横浜球場でのベイスターズ3連戦、1日おいて松山坊ちゃんスタジアムでのカープ2連戦という日程。いよいよ長期ロードの始まりである。両チームにここまできっちり勝ち越してきているだけに、五分以上の成績を残して名古屋に乗り込むという形でいってほしいものだ。ドラゴンズは確かに現在勢いにのっている。しかし、10連勝以上すると、1つ負けた時にその反動も大きい場合が多い。相手頼みというわけではないけれど、ドラゴンズが残り試合全勝するわけではない。ゲーム差は3ゲーム差に縮まったが、逆にいうと、11連勝もして、まだゲーム差が3もあるということなのである。相手を疲れさせるには、こちらが着実に勝っていくことなのだ。それに、安藤、下柳という2人の安定した先発投手が存在するから、これに運のよい井川と勢いのある杉山が本領を発揮すれば、そう大きく崩れることはないだろう。リリーフにはウィリアムス、藤川、久保田の三銃士がいるし。それに、今季のドラゴンズは好不調の波が大きい。あと2ヶ月ある。先はまだまだ長い。
(2005年7月31日記)